市民公益活動審議会 答申 第2章

ページ番号1007069 更新日 2022年9月21日

第2章 市民公益活動の促進に関する基本的な施策

第1節 吹田市における市民公益活動推進拠点について

1.新たな市民公益活動拠点整備の必要性

吹田市の市民公益活動に係わる団体の活動内容は多分野にわたっているが、資金、事務所、活動仲間の確保など多くの共通の課題を抱えている。そこでこれら共通の課題に対処することを専門にする支援組織(以後、中間支援組織と記す。)が必要になっている。
従来の支援組織や施設は障害者や高齢福祉など個別分野を支援するものであり、総合的にすべての市民公益活動を対象として支援するものはなかった。
「吹田市市民公益活動協働促進研究会報告書(平成14年3月)」は市民公益活動の支援を考える時に、中間支援組織が常駐する場や資料収集、市民公益活動団体の運営・経営に関する相談など、専門的な支援がなされる中央施設が必要であるとし、その中央施設を「本館」と呼ぶならば、身近な地域にあり、使用しやすい地域密着型の市民公益活動をおこなう場として、「分館」と呼ばれるものの整備も望まれると報告している。
本審議会でも報告書の内容について同様の考え方に立ち、新設が望ましいが、仮のセンターを作るなど、できるところ、できる形から進めていく必要があると考える。さらに拠点施設の整備とともに、講座の企画や市民からの相談業務などソフト面を充実することも重要である。

2.市民公益活動の場所の整備に関すること

(1)(仮称)市民公益活動支援センター「本館」(以下支援センターという。)について

支援センターは、市民公益活動を支援し、行政、企業との協働の場であり、設置場所については、駅前等の交通の便がよいところで、可能な限り、市の北部と南部に2カ所設置する。
支援センターは、市民が誰でも集える場所であり、市民と企業、行政の連絡交流、情報提供の場としての機能を持つと同時に、相談事業や市民公益活動をおこなう者の能力向上の場となるようなソフト事業を展開し、各団体の自立を支援する機能も必要である。
このような機能を十分に果たすためには、正確で新しい情報を提供できるコーディネーターが必要となる。さらに自立支援のための設備として、事務所スペース、会議室・作業のスペース、交流のためのスペース、資料等保管スペース、印刷機・パソコン等の事務機器、メールボックスなどが必要である。
支援センターの施設整備は市が提供し、管理運営は民間がおこなう公設民営とする。公募により管理運営のための運営委員会を設け、その事務局は市民公益活動のサポーター的役割を果たせる市民公益活動団体等に市が委託する。その場合、委託先は公募し当審議会などが公開で審査決定する。ただし当該施設が完成した時点で適切な市民公益活動団体等が存在しない場合は協議会方式で運営する。

(2)既存の施設を利用した市民公益活動支援地域拠点「分館」について

市民公益活動団体が地域で活動がしやすいように、一定の地域ごとに施設を整備し地域拠点とする。そこには活動のための会議や作業場として使用でき、登録団体の資料が置けるスペースを確保しメールボックスを設置する。そのため既存のコミュニティ関連施設や公共・教育施設の空きスペースなどを整備する必要がある。さらに、既存のボランティア室など、NPOやボランティアグループの活動を支援する施設については、特定の団体だけでなく市民公益活動団体のすべてが地域の活動拠点として利用し機能できるよう関係部局と協議し整備していく。

第2節 市民公益活動の活性化を促す補助金等の創設について

1.市民公益活動の活性化を促す補助金創設の意味

先に「市民公益活動の促進にあたっての市の基本姿勢」でも確認したように、市民公益活動の長所を活かすには、市民公益活動団体が独立し、自立して事業を展開できることが必要である。
そのため市民公益活動の基盤強化にあたっても、元来、行政などの支援に頼らず市民公益活動自身で独自に努力する必要がある。しかし、市民公益活動の現状は、その立ち上げ時期においてはぜい弱な場合も多く、活動の立ち上げ期など資金不足等の市民公益活動を支えるため、補助金などを整備すれば活動の自立・発展を大いに助ける面がある。
また、行政に並び、あるいは行政が直接取り組むことの難しい公的活動の担い手である市民公益活動団体を積極的に支援し育てることにより、市民公益活動は、地域に根ざしたお互いに助け合うことができるコミュニティづくりに寄与することができる。
さらに、補助制度の創設により市民公益活動の基盤の強化にもつながり、その結果として、市民に多彩な公共サービスが提供されるとともに、行政が行う公共サービスにかかる歳出の削減を進めることができるといった「投資的効果」も望める。この場合、補助金は市民公益活動の立ち上げや活性化を促す意味を持つことになる。
このような意味から、市民公益活動団体等の活性化策として、事業等を行う経費の一部を補助する補助金制度を確立する必要がある。

2.補助金創設にあたっての留意点

ただし、行政が補助する場合、特定の団体に偏るのではなく、一定の条件のもとですべての団体が公平、公正に補助を受ける機会を得られる制度として整備することが重要である。
これは、以下のような点に留意して取り組まれるべきであろう。

(1)補助金等の性格

市民公益活動は自立的に展開されてこそ、その特長を発揮できるという点を考慮すると、市民公益活動団体が自力で財源を作る力をつけていくことを促す配慮が必要であり、安易な補助金等の交付は避けなければならない。
そこで、補助金等の創設に当たっては、

  • 新規に事業を進める際の立ち上げを補助する
  • すでに実績のある団体、繰越金が多いなど規模の大きい団体よりも、創設から一定期間の立ち上がり期の補助等を中心とする
  • 一つの団体の実施する一事業については、支給期間に期限を設定し、かつ徐々に支給額を減額するなどの方式を採用する
  • 全額補助は避け、一定割合の自己負担を求める

などの工夫をすることも考えられる。

(2)補助金等の交付対象と審査基準

市民公益活動団体の事業に対して財政支援をする場合、補助を受けたい団体は、自分で手を挙げ、「こういう理由で補助が欲しい」と申告する応募制による補助制度を創設することが必要である。この場合、

  • 応募事業が吹田市内を主な活動範囲としている活動であるか
  • 補助を受ける団体が固定化していないか

などを審査したうえで補助対象事業に決定するなどの条件を整備することが必要である。

(3)補助金等の審査、決定、評価

補助金等の審査及び決定、および評価については、公募市民等による第三者機関に委ねることで、市民参加による公平で自治意識を高める(行政任せや行政依存を助長しない)運用を図るなどの検討も必要である。
この場合、審査の結果や不支給の場合の理由を公開しなければならない。
また、補助金等が有効に使われたかどうかを検証するとともに、事業成果や経験を交換する「報告会」を実施することは、市民公益活動の向上に向けて刺激を与える機会としても意味があるであろう。

注記

多様な市民公益活動の姿を踏まえ、補助金の内容も様々な規模・形態のものが組み込まれるべきだが、その中には、21世紀の吹田市のまちづくりをふまえた戦略的なプロジェクトを構想し、そのプロジェクト推進のための大型補助金を創設するなど、ダイナミックで夢のあるプロジェクトにつなげていくことも検討されるべきである。
また補助にあたっては、資金提供以外に、たとえば市が所有する資産で市としては耐用年数の過ぎたものを、従来どおりに廃棄するのではなく、市民公益活動団体に提供するといったことや、人材、知的財産などを活用するなどの形態も考えられる。これについても、今後の検討が必要である。

第3節 市民公益活動を支える支援基金の創設について

市民公益活動を支えると共に、その活動基盤を強化するための安定的、かつ継続的な資金的支援方策に支援基金の創設がある。

1.行政内部基金方式と公益信託基金方式のどちらを選択するか

支援基金の創設の方法としては、一つは、地方自治法の第241条に基づき、行政内部で基金を造成して、その運営果実を助成金として支給する方法である。二つめは、行政から独立する形で、外部に公益信託基金を設立し、その信託益で助成する方法である。
それでは、二つの資金的支援方策の中で、市民公益活動の支援策としてはどちらの方式が望ましいのだろうか。判断の基準としては、自主・自律的な活動という市民公益活動の特性からしても、まずは、基金そのもの独立性の担保、つまり行政からの制約や干渉が排除されることが最大の条件となろう。さらに条件として付け加えるならば、基金づくりにいかに多くの市民や関係主体が関われるかという側面、裏返せば、いかに多くの資金を集められる方式かということでもある。逼迫する行政の財政事情を勘案すると、行政のみの資金だけではなく、広く民間からの資金確保が可能な方式が望ましいということになろう。
さて、独立性の担保の問題であるが、行政内部での基金による助成方式は、たとえ第三者的な助成審査機関があったとしても、行政の既存施策や制度によるなんらかの制約は避けられず、市民公益活動の独立性の確保と、先駆性・先見性を育てあげるという視点からしても、意識的に行政外部に公益信託を設立する方式が望ましいのではないだろうか。
次に資金確保の問題である。いずれの基金にも共通する難題は、低金利下による果実の制約、つまり助成金総額の縮減化が避けられないということである。また、昨今の財政事情からも設立当初に大規模な基金拠出をおこなうことが難しいとするならば、できるだけ行政外部から、つまり市民、企業、関係機関等からの資金確保が容易な公益信託基金方式が望ましいということになる。

2.公益信託の特徴

公益信託は、公益活動のために自らの財産を提供しようとする個人や企業等が自らの財産を信託銀行に信託する方式で、信託銀行が定められた公益目的に従って、財産を管理・運用する制度である。主務官庁の許可を受けなければならないことはいうまでもないが、公益信託の場合には、信託銀行等が主務官庁への許可申請等をすべておこない、法人登記も不要なので設立手続きが簡単である。そのうえ、独立した事務所の確保、及び専任の職員を置く必要がないので、事務経費を節約して公益活動に多くの財産を使うことができる。
また、公益信託では、信託財産を取り崩して公益活動に活用することもできるだけではなく、財産追加、公募による小口財産を集めて運営する方式も可能で、前述したように持続的に市民や企業等からの寄付も集めやすい。

3.公益信託『吹田市市民公益活動基金(仮称)』システムについて

公益信託『吹田市市民公益活動基金(仮称)』は、行政から独立する形で、行政資金、市民寄付、企業寄付等からなる公益信託基金を設立し、優れた公益活動や、政策研究をおこなっている市民活動グループや団体への助成を通じて、吹田市における市民公益活動の基盤強化を図る目的で設立される基金である。

(1)システムの特徴
1)運営資金は毎年度予算化

公益信託基金の設立にあたっては、行政が一定金額を拠出することはいうまでもないが、財政事情からしても大規模な基金を拠出することには困難が予想されるので、毎年度一定額の予算を基金に繰り入れる形で助成金等の運営費を捻出する方法をとる。

2)募金キャンペーンの実施

市民・市民公益活動団体、行政、議会等が協働して募金キャンペーン等実施し、広く地域や社会に基金設立の意義、あるいは基金による助成活動の重要性を訴え、地域内外から持続的に寄付を募る努力をおこなう。

3)政策研究への助成

この基金助成の特徴は、活動助成と共に、政策研究助成もおこなうというところにある。
政策研究助成の意義は、予測される地域の問題を未然に防止し、迅速、かつ根源的な問題解決方策の検討が期待できるということであり、また、その政策研究成果が公共政策に反映されたならば、問題解決に伴う社会的・経済的コストの削減が見込まれるということでもある。
一方、政策研究成果が公共政策に反映されるということは、市民・市民公益活動団体の公共政策の立案過程への参画にも結び付くということでもある。

4)基金システム支援NPO

もうひとつの特徴は、基金を円滑に運営するための支援をおこなう市民公益活動団体の役割である。詳細は後述に譲るが、支援NPOは、運営委員会の助成審査に関わる事務局機能と共に、助言委員会(仮称、後述)の事務局機能をも担うことを通じて、活動助成、及び政策研究助成の質の向上と、システムの円滑な推進に寄与する働きを行う。

(2)助成審査会
1)構成メンバー

助成審査会は、第三者的な立場で、公平・公正に、活動助成や政策研究助成の対象グループや団体を審査する機能を付託された委員会で、メンバーは、行政、企業、大学、市民活動団体等の代表、および学識経験者、そして公募で選ばれた市民で構成される。また、メンバーには、地域外からの委員が含まれることが望ましい。

2)助成対象

助成対象は、地域での公益的な活動をおこなう市民活動グループや団体、及び地域が抱える問題解決のための政策研究活動をおこなう市民活動グループや団体である。

3)審査基準

審査基準としては、一つは、助成申請内容の先見性・先駆性、成果の実現可能性などである。二つめは、助成事業実施にあたっての実施手法の透明性、市民など、多様な関係主体の参画性、市民や社会に対する説明責任性などである。三つめは、助成事業の遂行そのもののマネジメントに関わる内容である。

4)公開審査

募集方法は公募方式とし、審査会主催の公開審査会で、企画提案に対する審査が行われて助成先が決定されることになる。その後、研究期間の中間段階で、中間報告会が公開で開催されるとともに、研究期間終了後に研究成果の発表と評価を兼ねた公開審査会が開催され、優秀な研究活動が表彰される。
公開審査は、多くの市民の参加を促すために記念講演、あるいはコンサート等のイベントなどとの組み合わせも必要で、審査日は、政策PR、公募PRも兼ねた場と位置付ける。

(3)助言委員会

助言委員会は、活動・研究グループへの技術的な支援を行う委員会で、学識経験者、専門家、コーディネーター、ファシリテーター等で構成され、助成グループからの要請に応える。メンバーについては、公募や推薦方法等により、主として地域で活躍する専門家(都市計画家、建築家、デザイナー、弁護士、ケースワーカー、学者、教員、公務員等、助成審査会メンバーは除外される)の参画が望まれるが、特に地域の大学の果たす役割が期待される。

(4)基金システム支援NPO

先述したように、基金システム支援NPOは、基金システムの円滑な推進を図るために、助成審査会、および助言委員会の活動のサポートをおこなう。
先述したように、支援NPOは、公募書類の作成、応募書類の事務的な書類審査、あるいは、助成グループに対するコーディネーターやファシリテーターの派遣等を行う。そのためにも、支援に関わる経費に対しては、運営資金の一部が業務委託費等として充当されるなどの検討が必要となろう。

第4節 市民公益活動団体に対する事業委託について

行政による公共サービスの提供を市民公益活動団体に委ねる「事業委託」という形態も、今後、活発化させる必要がある。これは行政を超える専門性や効率性を有する市民公益活動団体に、行政が実施すべき公共サービスの提供を委ねてしまうものである。
この場合、行政責任を明確化しつつ市民公益活動の特性を活かせる利点があるが、市民公益活動団体には行政にとって代わるだけの専門性や安定性などが求められる。

1.市民公益活動団体に事業委託を進める理由・意味

(1)市民自治、コミュニティ再生

従来、公共サービスはもっぱら行政が提供するものとされてきたし、事業を外部に委託する場合も企業への委託が一般的であった。しかし、行政サービスの肥大化と市民ニーズの多様化に伴い、市民自らが主体となって問題を解決し、まちづくりを行う本来のあるべき姿が必要となってきている。
市民公益活動団体への事業委託は、市民自らが公共サービスを担い、行政と目的・責任・役割を共有することを意味する。
市民と市民公益活動団体が事業を通じて、社会的問題や課題を自らの問題として考え、お互いに話し合い、調整を図りながら問題解決に取り組むことは、市民の自治意識、コミュニティ意識の向上につながる。

(2)公共サービスの質の向上、新しい公共サービスの創出

行政の活動は、過半数以上の市民が望む公約数的なものに限定されるが、市民公益活動は、それぞれの得意な、あるいは特に関心を寄せるテーマに集中的に取り組むことができ、各分野において行政以上に専門性を持っている場合がある。それらの団体が、公共サービスに参入することで、公共サービスの高度化・多様化が図れる。
また、地域に密着した市民公益活動団体は、地域における問題や住民ニーズを素早く把握することができ、その機動性を活かすことで、より柔軟で細やかな公共サービスの提供が可能となる。
さらに、市民が新たな発想で考えることで、生活者、利用者側の視点を反映した新しいサービスが創出され、より根本的な解決策が期待できる。
このように、専門性、効率性を持った市民公益活動団体への事業委託は、行政の簡素化と最適な税配分の達成にもつながる。

(3)市民公益活動団体の成長を促す「投資」的効果

市民公益活動団体への事業委託によって行政が圧倒的に大きな位置を占めてきた公共サービスへの市民公益活動団体の参画が促され、活躍できるフィールドが大幅に拡大できる。さらに、こうした事業委託などの環境整備を活発に進めることにより、市民公益活動団体の財源確保と事業遂行能力が強化され、その成長を促す「投資」的効果も考えられる。

(4)地域経済への寄与

市民公益活動団体は、先駆性、開拓性を持つ上に、必ずしも採算にとらわれない特徴があるため、収支面での制約を超えて創造的な活動を展開していくことが容易である。実際は、ホームヘルパー制度などのように、現在、広く実施されている様々な社会サービスの大半は、当初、市民公益活動から始まったものである。このように市民公益活動は、行政同様、営利を求めない公共活動でありながら、地域に根ざした新しい産業、事業を生み出す可能性を持っている。
市民公益活動団体への事業委託は、行政では実現が難しい「多方面の公共サービス」を生み出すとともに、その事業を地元に定着させることができる。それが、今後、市域内での雇用の拡大など、地域の経済発展にも寄与することになる。

2.市民公益活動団体に事業委託を優先させる領域

企業への委託と同様に、市民公益活動団体への委託の場合においても、行政で直接実施するよりも委託する方がより市民ニーズを満たし、よりよい成果を上げられるものでなければならない。また、委託とはそもそも行政責任のもとで事業を委ねるものであることから、市民が自主的に取り組むべきことまでも委託事業とするものではない。市民が担うべき領域、行政が担うべき領域は時代によって変化するものであるし、明確に区切りができるものでないが、公共サービスにおける行政と市民の役割分担という視点に立って、事業を見直すことが必要になる。
又、市民公益活動は、その特性を発揮できる領域が幅広いものであるから、特定の分野に限らない多様な委託を考えていくべきである。しかし、特に積極的に進める領域は、以下のようなものが考えられる。

  • 市民が主体となって進めていくことが望ましい領域
  • 多数の市民参加が求められる領域
  • 市民公益活動団体の持つ専門性が発揮できる領域
  • 地域に即したサービスの提供が求められる領域
  • 個々の事情に合わせた対応が求められる領域
  • 地域限定的な課題への対応で、当該地域の市民自身の関与が認められる領域
  • まちづくりに関する計画の策定に関わる領域
  • 市民活動が先駆的に課題解決に取り組んでいる領域
  • 新たな政策提言・公共サービスの創造ができる領域
今後考えられる事業例

(調査・統計業務、窓口サービス業務、情報化関連業務、技術指導・相談業務、調査研究等業務、展示会開催業務、イベント等の運営業務、研修会・講習会の企画・運営、公共施設の管理運営業務、広報番組の制作 等)

3.市民公益活動団体に事業委託を進めるにあたっての課題

(1)事業委託ルールの明確化

前述の市民公益活動団体へ事業委託を進める場合は、市民と行政との協働も含めた総合的な方向性を示した上で、全庁的な取り組みの中で事業委託を進めるべきである。特に、市民公益活動団体へ優先的に行う事業委託においては、その公正、透明性を確保するため、委託事業選定や委託先選定の基準、契約方法などのルールを明確化することが必要である。

(2)事業委託における現行制度などの課題

行政が委託契約をする場合は、競争入札が一般的であり、価格優先の基準で委託先が選定される。また、事業の目的や性格から、入札がなじまない委託の場合、特定の相手先を選ぶ随意契約という方法は、専門性、特殊性などを考慮して行われる。しかし、それでも現行の委託契約にかかる財務規則や手続きなどは企業を委託先と前提としたものであり、委託先には実績や信用が求められる。吹田市の市民公益活動団体には、規模の小さい団体も多く、専門性、特殊性は持ちながらも受託能力を持つ団体は少ないのが現状である。そのような点から、事業委託する際には、当面は、市民公益活動団体の財政の弱さをカバーするような方法を考慮することも必要となるだろう。
ただし、随意契約による場合でも、指名競争入札的な選定の方法をとるなど、市民公益活動団体間においても競争原理を働かせ、お互いに能力を高めていかなければならない。

(3)企画段階からの公募(企画提案方式の施行)

現在実施されている事業委託は、行政が事業内容を検討し、外部に委託するのが通常であるが、新たな課題や行政だけでは取り組みにくい問題に対応する事業については、今後様々なアイデアを取り入れていくことが必要となる。
市民公益活動団体は、その多彩な活動を通じて、行政にはない発想や企画能力やノウハウを持っている場合がある。
そこで、こうした市民公益活動団体が持つ知識や経験、情報等を十分に発揮できるよう、企画段階から事業に参画できる「企画提案方式の委託事業」を実施する必要がある。
また、新たな課題や行政では取り組めない事業を市民公益活動団体から公募し、委託事業として実施していくことは、市民側からの政策提言が透明性を保ちながら行政の事業として活かされる方法の1つとなる。

(4)登録制度の導入

行政の委託情報は市民公益活動団体にはなかなか行き届きにくい状況がある。委託を受ける意思のある団体を登録し、それを委託の条件にするなどの登録制度の導入を検討すべきである。そのことにより、市民公益活動団体側からは、委託の意思の表示ができ、行政側からは、それらの団体を把握するといった利点がある。また、そのリストを公開することで、委託先選定の透明性をさらに確保することができる。

(5)総合的な審査、評価制度の導入

事業選定や委託先選定にあたっては、選定委員会を設置するなどし、特定の団体に偏らない客観的な判断で行わなければならない。また、市民公益活動の特性を活かして委託を進めることから、そのことによりどのような成果があったかを事業全般から検証し、評価することも必要である。特に、協働の視点においては、結果の報告だけでなく、事業経過も共有できるようにすることが大切である。さらに、その結果が今後の行政施策に反映できるような、行政内の機関と連携するシステムを検討する必要がある。

4.「市民活動団体への事業委託マニュアル」の作成

市民公益活動団体への事業委託を進めるにあたり「(仮称)市民公益活動団体への事業委託マニュアル」を作成し、公開しておくことが必要である。それにより、行政内部に浸透させ、積極的に市民公益活動団体への事業委託を行う体制づくりと職員の意識の改革を図るとともに、市民や企業への理解も深めていくことができる。
「市民公益活動団体への事業委託マニュアル」に盛り込む内容として、以下の項目が考えられる。

(1)委託事業選定基準

前述のとおり、市民公益活動団体の特性を活かすことができる領域において事業を選定していくことが必要である。

(2)委託先選定基準(業務遂行能力、専門性、市民参加度 など)

委託先を選定する基準としては、まず行政の業務を請け負うという責任において、業務遂行能力があるかどうかを見る必要がある。そして、専門性、市民参加度などの市民公益活動団体への委託の特性において、選定する必要がある。別枠で市民公益活動団体を優先させる場合には、その相手先の条件として、市民がオープンに運営参加しているか、公益性を持った団体であるかという点が特に重要な基準となり、選定にあたっての理由は明確であるとともに公開しておくことが必要である。

(3)選定方法

市民公益活動団体が公共サービスに参入できる機会を増やすための体制作りとして、前述した企画提案方式の導入など、具体的な方法の明示も必要である。

(4)事業委託実施にあたっての留意点(契約手続き)

実際に、市民公益活動団体への事業委託を実施するにあたり、以下のことに留意する必要がある。

1)契約にかかる書式の統一、簡素化

契約締結に至るまで様々な書類等提出が必要でありその手続きは煩雑であるので支障がない範囲で、提出書類等の簡素化の検討も必要である。

2)委託料の前金払い、契約保証金の免除

委託経費の支払いは、事業完了の確認後に支払うことが原則であるが、完了前に一定の経費を支払わなければ、事業の遂行が困難な場合が考えられる。このため、委託料の前金払いなどの方法をとる必要がある。また、資金不足の市民公益活動団体にとっては、契約保証金の支払いが困難な場合が考えられるため、その免除も必要となるが、別途履行保証の仕組みづくりが必要である。例えば、中間支援組織によるコンサルティングを導入する方法や複数の市民公益活動団体が連帯して事業を行う、ジョイントベンチャーの方式を推進するなどが考えられる。

3)仕様書

市民公益活動団体との契約においては、協働の視点に立ち、委託の内容説明を十分に行わなければならない。このため、市と市民公益活動団体の役割について整理し、市と市民公益活動団体とで協議して決めていくのが望ましい。

4)成果の帰属

行政との委託契約においては、一般的には成果は委託元である行政にすべて帰属するのがほとんどである。しかし、協働事業という視点や市民にとってより有益になるためにという視点から、成果物の所有権の共有や利用権といった形での帰属の方策の検討も必要であり、事前に協議し、その内容を契約上も明示する。

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