令和3年(2021年)2月 施政方針

ページ番号1008331 更新日 2022年9月21日

市議会2月定例会の冒頭で、市長は市政運営に対する基本的な姿勢・理念を示す施政方針を表明しました。

はじめに

「市制施行80周年を迎える、この節目の年は、中核市への移行や、市内各地で展開する重要なまちづくり事業の着手元年として、本市の歴史に残る年になることは間違いありません。」これは、昨年私がこの場で語った言葉です。

たった一年の間に、これほどまで世の中や私たちの暮らしが変わってしまうことは想像できませんでした。市制施行80周年という吹田市の節目の年は、図らずも、世界的にも大きな時代の転換期となりました。

急速に感染拡大した新型コロナウイルスは、今なお明確な収束時期が見えません。我が国でも連日、多くの感染者が発生し、お亡くなりになられた方も多数おられます。心よりお悔やみ申し上げます。また、今日も様々な場で症状と戦っておられる皆様の、一日も早い回復をお祈り申し上げます。

合わせて、医療、保健、消防、介護、保育をはじめとする、命と暮らしを支えるために欠かせない職務に従事されている、いわゆるエッセンシャルワーカーの皆様には、深い敬意と感謝の意を表します。

一方で、これらの方々や感染された方、また、その御家族が差別的扱いやいじめを受けるという事例を聞き、心が痛みます。感染への不安によるものとはいえ、このような時こそ相手の立場に立ち、互いを思いやる心が大切です。社会の人権意識をより高めるため、不断の努力が必要であることを痛感しています。

感染症がもたらした健康被害、経済的影響、そして、不安な気持ちに対応するために、住民に最も近くある自治体として、中核市としての権限を最大限に生かし、誠意を持って市政を運営してまいります。

それでは、令和3年度の一般会計当初予算及び各議案の御審議をお願いするに当たり、市政運営に向けた基本方針について、述べさせていただきます。

振り返り

緊急に打つべき策は何か、その取組方法と優先順位はどうあるべきか。同時に、中長期的に止めてはならない施策や整理すべき課題にどう対応するのか。

令和2年度は、これまでになく多くの、また、厳しく重い問いに対峙し続ける一年でした。市民を守るための課題に対し、議会と共に、限られた時間の中で深く検討を行い、最適と思われる判断を重ねてまいりました。

昨年4月の中核市への移行により、移管を受けた保健所は、当初から感染症対応の最前線に立つことになり、「吹田市保健所」としての運営が軌道に乗る前に、現場には大きな責任と負担がかかる事態となりました。その中で、今も懸命に使命を果たしている職員を誇りに思います。

緊急事態宣言の発出などにより、事業活動も大きな影響を受けています。必要な支援を必要な方にお届けするために「吹田市新型コロナウイルス感染症緊急対策アクションプラン」により、市民生活、事業活動、医療・福祉現場、学習活動、それぞれへの支援を実施してまいりました。

今後、ワクチン接種という未経験の大規模なプロジェクトにも取り組みます。関係機関と連携し、全庁を挙げて、迅速、円滑に実施してまいります。

この間、市民の皆様にも、外出の自粛、地域行事の見合わせなど、感染拡大防止に御協力をいただいております。苦難を乗り越え、全ての市民が安心して、幸せな生活を取り戻せるよう、職員一丸となって公務員としての使命を果たしてまいります。

令和3年度への展望

災害対策・消防力の強化

近年、自然災害が頻発するとともに、激甚化しています。昨年も「令和2年7月豪雨」など大規模な自然災害が発生し、熊本県をはじめ、広い範囲で多大な被害が発生したのは記憶に新しいところです。

大規模災害発生の際には、消防、救急、警察などが市民の皆様の命をお守りします。しかし、場合によっては、これら「公助」が速やかに行き届くとは限りません。防災用備蓄倉庫の整備など、公助の更なる強化はもちろんのこと、自主防災組織活動への支援をはじめ、自身や家族、隣人の命を守り救い合う、自助、互助の力を高める取組を進めてまいります。

公助の要である消防については、市独自の体制強化に加え、通信指令業務を豊中市、池田市、箕面市、摂津市との5市で共同運用する合意に至ったことで、新たな自治体連携モデルにより、一層高度で広域的な消防体制を実現します。令和6年度の運用開始に向け、各市で連携して協議を続けてまいります。
これは消防分野に限らず、今後の行政運営における自治体間連携の重要性を示す、大きな挑戦となります。

健康医療・福祉

本市では、北大阪健康医療都市(健都)を含む市全体で健康寿命を延ばす取組を進めています。日常生活を自立して送れる期間を延ばすとともに、病気、障がい、介護の必要性にかかわらず、必要な医療や福祉サービス、支援を受けながら、身体的のみならず、精神的、社会的な健康も含め「自分のやりたいことができる」状態を保つこと、つまりQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の維持向上を目指しています。

「自分らしく、笑涯、輝く」と銘打ち、庁内基本方針を定め、健康を意識せずとも生活習慣が健康を生む具体的な仕掛けづくりに取り組んでまいります。

昨年、本市は、国立循環器病研究センター、吹田市医師会と連携・協力して、市の検診受診者を対象とした「“健都”循環器病予防プロジェクト」に取り組む覚書を締結しました。

これは心不全重症化を予防することにより健康寿命の延伸を図ろうとする画期的な研究であり、最先端の研究機関と共に長期的に取り組むことで、独自の健康づくり施策を社会に実装しようとするものです。この取組を通じて、循環器病の予防と制圧を目指し、健康・医療のまちづくりを更に進めてまいります。

喫煙者は新型コロナウイルス感染症の重症化リスクが高いとされています。喫煙者の方には、改めてたばこを吸うことのリスクについて意識していただき、禁煙にチャレンジされることを望みます。
本市は市民の健康と良好な都市環境を守る両面から、たばこの煙のないまち「スモークフリーシティ」の取組を更に強く進めてまいります。

教育

「吹田の子供の教育は吹田市が責任を果たす」という理念の下、教育環境と教育水準の維持向上に取り組みます。

本市の小・中学生の学力は全国でも高水準にあります。また、学校現場の様々な課題については、教育委員会と連携し、解決に努めてまいりました。しかし、いじめ重大事案が発生した背景には、学校組織のガバナンス体制を、時代に即応して改革して来なかった、我が国の教育体制全体に関わる構造的な問題があることが分かりました。

教育現場で起こった問題に対して、私は謝罪をいたしました。それは私にとって、教育改革に取り組む決意表明でもありました。教育体制の改革は、現在と未来の児童・生徒に対する市長として果たすべき責任だと考えています。

本市の教育行政が向き合わなければならない課題の解消を図り、懸命に働く前線の教師を支え、特色ある教育を展開すること、すなわち、児童・生徒のかけがえのない時間を実り多きものにするためには、中核市となった今こそ、本市にふさわしい教育モデルの構築に取り組む必要があります。

本市教育委員会は、大阪府教育委員会が持つ、教職員に関する事務権限の移譲を受けるための協議を始めています。新たな教育体制を確立するという挑戦の前には多くのハードルがありますが、教育委員会と力を合わせて、取組を進めてまいります。

新たな挑戦とともに、小・中学校の特別教室へのエアコン設置など、子供たちが安全で快適に学習できるよう、学習環境の整備についても引き続き進めてまいります。

子育て

核家族化が急速に進み、共働き家庭が増加した社会において、子育ての責任は全て親が抱えるのではなく、社会や地域が「子供の健やかな育ち」を支える環境こそ、今、育児に求められている姿だと考えます。

子育て世代の転入増加により、本市の保育需要は依然として高く、受け皿不足が続いています。その対応として、保育所、認定こども園の整備や「吹田市保育士・保育所支援センター」の取組による人材の確保など、引き続き受入れ児童数を増やすことに合わせて、保育の質を落とさない体制の充実に力を入れてまいります。

公立保育所等では、ICT化を進めることで事務作業の省力化を図り、職員が子供と向き合う時間を増やします。また、多くの御要望があった使用済み紙おむつの処分については、保護者の負担軽減を図るために、園での処分を開始する予定です。

子育てをする全ての家庭が、心身ともにゆとりを持って子育てできる環境を整えること、それは子供の生命と人権を尊重し健やかな成長を保障するため、行政が担う基本的役割です。本市では引き続き、妊娠・出産・子育てを通して切れ目ない支援を行う「吹田版ネウボラ」の取組を一層充実させてまいります。

環境

本市は「もったいない」の精神を行動規範とし、無駄な消費を抑制する取組を進めてきました。その代表的なものとして、「吹田方式」とも称される再生可能エネルギー比率の高い電力調達があります。

全国での制度化に先駆けてのレジ袋の有料化、また、使い捨てコンタクトレンズの空ケース回収など、できるところから脱使い捨て・資源の有効利用に取り組んでいるところです。

近年の異常気象は、文明社会に対する明確な警告と捉えています。持続可能な社会の実現のため、自治体は率先して、地球全体の環境にも目を向け、責任ある行動をとらなければなりません。

気候変動対策は一つの自治体の範囲にとどまらず、複数自治体と連携し、広域で取り組んでこそ効果が期待できるものです。まずは手始めとして、今月10日に豊中市と共同して「気候非常事態宣言」を行いました。今後も、広域的な視点で、周辺自治体と連携を図り、気候変動対策に取り組んでまいります。

昨年、菅総理大臣は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。
その達成には、私たち一人ひとりのライフスタイルの転換が不可欠です。市民、事業者、行政のそれぞれが、利便性や快適性をどこまで追求するのか、その範囲を共有した上で、「成長し続ける社会」ではなく、SDGsの理念とも一致する「環境と共生できる成熟した社会」の実現にチャレンジいたします。

市内では住宅開発が続いています。開発を契機に、周辺環境が向上するような「環境まちづくり」へと誘導しているところです。引き続き、本市が独自に制定している環境まちづくり影響評価条例の対象となる大規模開発をはじめとした、開発事業者に対し、本市の目指す高質なまちづくりに資するよう、各部署が連携して指導、誘導してまいります。

都市基盤・施設

道路、上下水道、また、みどり、公園などの都市インフラの維持管理事業は、必要な経費を継続的に投入しなければなりません。発生した事案への対応ではなく、積極的な予防保全という考えに基づき、その予算を「まちの固定費」に位置付け、引き続き計画的に進めてまいります。

一方、長年、実現できなかった難課題があります。私は一昨年の2期目の市長就任時、全部長を前に、「解決が困難な課題から目をそらすことなく、公務員の使命として真正面から取り組もう」と伝え、以来、まちづくりにおいて、積年の課題解決に注力してきました。

具体的には、佐井寺西土地区画整理事業、河川の暗渠化により遊歩道整備などを行う上の川周辺整備事業、北千里小学校跡地への複合施設の建設、南千里駅西側の北部消防庁舎等複合施設の建設。これらは全て、令和3年度に工事に着手する予定です。いずれの事業も規模が大きく、完了までには時間を要しますが、市民生活の向上に直結する事業として、着実に進めてまいります。

工事の開始に向けて取組を前進させる事業としては、千里丘朝日が丘線の道路拡幅、山田三ツ辻交差点の改善、江坂駅北側に2基目のエレベーター設置があります。千里ニュータウンにおける民間施行の市街地再開発事業につきましても、権利者とともに事業の実現に向け取組を進めます。また、市内の公園全体の、再整備や管理運営手法を見直し、新しい方式を、まずは江坂公園、桃山公園に導入し、更なる魅力向上に着手します。

更に、令和3年度中には、勤労者会館の大規模改修工事が完了し、リニューアルオープンする予定です。千里山地域では、コミュニティバスの試験運行を開始します。

都市の魅力、暮らしやすさにおいて、既に高い評価がなされている本市ですが、より高質で、持続可能なまちとなるよう、引き続き、粘り強く取り組んでまいります。

文化・スポーツ

文化や芸術、スポーツは、私たちの人生に、輝きをもたらしてくれます。時には、心を和ませ、前向きな気持ちを呼び起こす、生命維持装置にもなります。

昨年9月、改修工事により長らく休館していたメイシアターがリニューアルオープンし、10月には、吹田市出身の世界的なヴァイオリニスト葉加瀬太郎さんにコンサートを開催していただきました。情熱的な演奏、そして吹田市プロモーション楽曲「Home Suita Home」の初演の場に臨席し、改めて文化・芸術の不変の価値を実感させられました。

感染症拡大により、文化・芸術、スポーツの分野は大きな影響を受け、多くの方々が発表や挑戦、試合の場を失っています。コロナ禍のトンネルを抜けた後には、市民生活に輝きと豊かさを取り戻す取組を進めます。

行財政運営

新型コロナウイルス感染症の影響により、市税の大幅な減収が見込まれ、財政状況が厳しくなると予測されますが、必要な施策は進めなければなりません。これまで「財政運営の基本方針」にのっとり、臨時財政対策債の発行を抑制してきましたが、有事と言える状況下において、市民生活と保健医療体制を維持するための財源確保策として、例外的な発行を決断したところです。

令和2年度は、非常事態に対応するために確保していた財政調整基金を活用し、緊急対策を迅速に実施することができました。経済、財政の厳しい局面が当面続くことが見込まれる中、市民にとって、「直ちに必要なこと、これから必要になること」を継続して、総合的に判断し、この有事を乗り切ってまいります。

現在、社会全体のICT化が急速に進んでいます。行政手続においても、ウィズコロナの時代の、あるべき姿を見据えた市民サービス向上と、効果的・効率的な事務処理改革を同時並行して推進してまいります。

基礎自治体としての責任を果たし、多様化・複雑化する市民ニーズに柔軟かつ迅速に対応するため、自ら考え、課題に立ち向かい、行動できる人材の育成に努め、組織としての仕事力を強化します。そのためにも、省庁等への職員派遣、また、北摂の各自治体や連担する中核市NATSの連携取組を人材育成の機会と捉え、継続して実施してまいります。

結びに

新型コロナウイルス感染症のみならず、近年頻発する大規模自然災害や、厳しさを増す暑熱環境など、危機的な気候変動にも直面し、私たち一人ひとりの生活の仕方、社会のあるべき姿、ひいては生き方をも見つめ直す、そんな大きなうねりが起きていると感じます。

まちと、そこでの暮らしが持続可能であるために、守ること、創り育むこと、変革を決断すべきこと、それは何なのか。先行きが不透明な今は、その答えを明確には提示しきれない時代であるといえます。

しかし、どんな時代であっても、大切なのは、多くの知恵を民主的に持ち寄り、時には前例のない道を選択していくことです。それにはリスクも伴いますが、私には、今ある課題に対処すると同時に、将来も見定めた方向付けを行う責任があります。

そして、議会での議論を通じて、より適した選択を積み重ねることが、安心して豊かに暮らすことができる吹田市を守り、持続させる基本であることを、強く認識しています。

私たちは必ずこの危機を乗り越えることができます。今回経験している教訓を政策に織り込み、来るべき出口に向けて更に力強く市政を運営してまいる決意を申し上げ、令和3年度に向けた施政方針とさせていただきます。

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