令和2年度

ページ番号1016073 更新日 2023年6月30日

令和2年4月から改正健康増進法が施行され、複数の人が利用する施設は原則屋内禁煙となりました。
また新型コロナウイルス感染症の流行も受け、3密を避けるための喫煙所の閉鎖や、喫煙が重症化のリスクになるという報告もあり、社会的にもたばこへの関心が高くなっているのではないでしょうか。
そこで、喫煙者の方や、周りに喫煙者がいる方がぜひ、たばことの付き合い方を考えるきっかけとなるような講演をお届けしました。

概要

講演名
「メディアが伝えない!たばこの本当のはなし」
  • 前編:「健康を守るには何が必要?」(約30分)
  • 後編:「新型タバコのリスクをどう考えるか?」(約30分)
講師
大阪国際がんセンター 田淵貴大先生
実施方法
約1時間の講演内容を動画配信でお届けしました。
視聴可能期間:12月21日(月曜)午前9時~12月28日(月曜)正午
※オンライン環境がない方向けに動画の上映会も開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大による影響のため、中止となりました。

内容について

「メディアが伝えない!たばこの本当のはなし」につきまして、先生には【前編】健康を守るには何が必要?と、【後編】新型タバコのリスクをどう考えるか?の二部に分けてお話いただきました。
それぞれの内容について、概要をお届けします。

【前編】健康を守るには何が必要?

健康は社会に大きく左右される

写真:スライド1 社会格差は健康格差に直結するため、健康は社会で決まる

とある病気により多くの人が亡くなっているという事実が明らかな場合、人々の健康を守るためには、何が必要でしょうか?

医学の進歩が最も重要な要因であると思われる方も多いですが、実際には、衛生面や栄養状態の向上などといった、社会環境の向上が大きく関係している、ということです。


写真:スライド2 日本人の死亡における予防可能な危険因子として喫煙が一位

現在「喫煙」は、日本人の死亡における予防が可能な要因として、最も上位にあります。

令和2年には健康増進法の改正などによりたばこにいくつか新しいルールが設けられ、社会環境的にも大きな一歩となりましたが、今後もたばこ対策は優先的に取り組むべき課題と言えるでしょう。

たばこ対策の3本柱

写真:スライド3 たばこ対策の3本柱

先生によると、諸外国の施策の実績からも、たばこ対策を進めるうえで重要な柱は以下の3つということです。

  1. たばこ税増税を含むたばこの値上げ
    日本のたばこの値段は、世界的に見ても非常に安いと評価されています。
    たばこの値上げは人々の禁煙を促すために効果的な取組であるようです。
  2. すべての空間の禁煙化
    改正健康増進法の施行によって、施設の屋内など一部の空間においては原則禁煙となりましたが、まだ十分とは言えません。
    将来的にはすべての空間の禁煙化が望ましい状態と言えるようです。
  3. 脱タバコ・メディアキャンペーン
    テレビCMやラジオなどのメディアを通じて、人々に禁煙に繋がる情報を伝えることは大変効果的ですが、現在の日本ではそれらの取組がなされていないことが課題とされています。

喫煙者の方に禁煙をしてもらうには…?正しいだけでは伝わらない!

写真:スライド4 先生が作成した学生向けの禁煙啓発ポスター

喫煙者の方に禁煙を勧めようとするとき、なかには「たばこを吸うことは悪、禁煙を勧めることは正義」と考えてしまう人がいることは問題です。たばこを吸っている人は社会や環境によってたばこを吸うように仕向けられてしまったという側面が非常に強く、喫煙者自身を非難してしまうのは正しい姿ではない、ということです。

また、喫煙者の方には、「禁煙」という言葉を使って説得しようとしてもなかなか思いが伝わりません。そんな場合、あえて「禁煙」という言葉を使わずに、別の興味を引くようなテーマから結果的に禁煙に興味を持ってもらうのは、効果的な方法の一つであるようです。

まずは屋内の禁煙化の徹底から

写真:スライド5 屋内での喫煙は空気が汚染されやすい

数年前、中国からの黄砂の影響などにより、PM2.5濃度の上昇が話題となりました。

日本のPM2.5濃度の年平均値は約9.6ですが、屋内で喫煙した場合、濃度は非常に高くなります。
3人が喫煙するレストラン内では濃度が600程度になる場合もあるとのことで、大気汚染の緊急事態レベルの濃度は500であるため、これは危険な値と言えるでしょう。
先生はこういった点からも、屋内の全面禁煙化については徹底して対策を進めるべき、と見解を示されています。

【後編】新型タバコのリスクをどう考えるか?

加熱式たばこの危険性

写真:スライド6 2016年に加熱式たばこのシェアが急増

「加熱式たばこ」と「電子たばこ」を合わせて新型たばこと呼んでいますが、2016年テレビ番組で加熱式たばこのIQOSが紹介されたことをきっかけに、加熱式たばこのシェアが急増しました。
先生によると、これには次のような問題点や危険性があります。

(1)使用者はもともとたばこをやめたい人に多い

先生の研究によると、加熱式たばこIQOSの使用者のうち、10%の人が「たばこをやめる気のない喫煙者」であり、19%が「たばこをやめたい喫煙者」であったのことです。
また、加熱式たばこを吸い始めても紙巻きたばこを止められた人の割合は少なく、IQOS使用者の72%が紙巻きたばこを併用しているようです。

(2)パンフレット等による誤解

写真:スライド7 加熱式たばこのパンフレット記載内容

IQOS等のパンフレットでは、紙巻きたばこに比べて加熱式たばこは有害性成分の量が約90%も低減している、とアピールされていることがあります。
こういった広告を見ると、加熱式たばこなら健康へのリスクも90%減になるような印象を受けますが、実際は有害性成分の量に比例して健康リスクも低下するわけではないことには、十分注意が必要です。

(3)加熱式たばこに変えると使用頻度が増える

血中ニコチン濃度自体は紙巻きたばこに比べると約2割減とはなるものの、これはニコチン依存症を発症するには十分な量です。
また、加熱式たばこの使用者はかえって吸う本数が増えるとの報告があり、健康リスクの増大が懸念されます。

加熱式たばこのリスクについて、どのように考えるべきか

写真:スライド8 加熱式たばこの宣伝文句について

先生は、これまでに分かっている科学的な知見に基づき、「加熱式たばこによる吸っている本人への健康被害は、紙巻たばことほとんど変わらないのではないか」と予測されています。
IQOSの箱やパンフレットにも小さく、「リスクがないというわけではありません」「たばこ関連の健康リスクを軽減させる一番の方法は、紙巻たばこもIQOSも両方やめることです」と書かれています。
これは重大な事実であり、加熱式たばこのリスクについては安易に軽視せず、よく考える必要があるでしょう。

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