吹田市立小・中学校の適正規模等に関する意見書

ページ番号1003536 更新日 2022年9月7日

この意見書は、平成13年(2001年)3月28日に、吹田市立学校適正規模検討会議(座長 山本冬彦)から吹田市教育委員会に出されたものの全文です。

吹田市立小・中学校の適正規模等に関する意見書

吹田市立学校適正規模検討会議は、児童生徒数の減少により市内の小・中学校の小規模化が進んでいること、また、一部の地域では住宅開発等により学校が大規模化していることなど、学校規模がアンバランスな状況になっていることを踏まえ、学校の適正規模等について幅広く意見を求めるために、平成12年(2000年)7月6日に発足した。

検討会議委員は13人で構成し、学識経験者、学校・幼稚園・PTA・地域諸団体の代表及び公募市民がメンバーとして招集され、12回にわたって検討を続けた。

検討内容は、小・中学校の適正規模の考え方及び今後の学校規模適正化の方向性についてであり、小規模校・大規模校のフィールドワークや教職員からの意見聴取なども行いながら議論を進めた。検討会議では、議論をする中で意見集約をしながら合意形成がなされるよう努めた。その中から、今後、行政が学校規模の適正化に取り組むにあたっての原則と方向性を示す内容を意見書としてまとめることにした。

1.学校規模の適正化を進めるにあたって

今後、行政が学校規模適正化の具体的方策を検討し適正化を進めるにあたっては、子どもの成長発達の観点や教育効果の観点を中心にして考えることが最も重要である。適正化の実施に伴う様々な問題はあるが、可能な限りどの学校においても適正規模が確保できるよう取り組んでいく必要がある。また、学校規模の適正化を単に規模だけの問題として処理するのではなく、適正化を新しい学校づくりや魅力ある学校づくりを一層推進する契機とすべきである。

現在、規制緩和の流れの中で学校の選択という制度も見られるが、地域における人間関係が希薄化している中で、子ども同士のつながりや保護者同士のつながり、学校と地域のつながりを深め、地域全体で子どもを育てることの重要性が指摘されている。学校の選択を無条件に認めると、学校と地域社会との結びつきも希薄化することが懸念されるため、通学区域制度については堅持することを基本としながら、地域に根差した学校づくりを進めることが大切である。

また、地域には、それぞれに歴史があり、地域住民の学校に対する思いもあるので、適正化を実施する際には、その必要性について十分説明を行い、地域の理解と協力のもとに実施できるよう努力すべきである。

2.小規模校・大規模校の問題点等について

小規模校・大規模校の問題点等について把握するため、小規模校・大規模校のフィールドワークを行うとともに、教職員からも意見を聞きながら議論を進めた。その中で各委員から出されたおもな意見について以下に示す。

1.小規模校に関する意見

  • 1クラスで6年間を過ごすことは、人間関係の広がりといったことを考えると問題がある。とくに、子ども同士のトラブルなどで、どうしてもうまくいかないときはしんどい。最低クラス替えができる人数は必要である
  • 子どもたちは、無意識に寂しさや盛り上がりのなさを感じているのではないか。
  • 一人の教員が数多くの校務分掌を担当しなければならないため、教員にかかる負担が大きい。
  • 学校施設にゆとりがあるのに、地域への開放などの有効活用が不十分である。
  • 隣接し合った小規模校では、それぞれ小規模のデメリットを克服するための取組みは行われているが、学校間の交流などの取組みにおいて検討課題も多い。
  • 行事では、一人ひとりの子どもに役割が与えられて、生き生きと活動している姿もある。
  • デメリットもあるが、一人ひとりの子どもによく目が行き届き、きめ細かな指導ができるなどのメリットもある。

2.大規模校に関する意見

  • 余裕教室が少なく、特別教室の使用にも制限を受けるなど、ハード面での問題がある。とくに、今後、総合的な学習や選択学習などに取り組むにあたって支障が出るのではないか。
  • 休み時間などに、運動場で子どもが自由に動き回れないのは問題である。
  • 人数が多くて息苦しいと感じている子どもがいるなど、子どもの悲鳴が聞こえそうな感じがする。
  • 災害時、緊急時などの安全確保について不安がある。

3.その他の学校規模に関する意見

  • 小規模校より大規模校の問題を優先すべきである。
  • これからの教育を考えると、法令等で示されている適正規模の基準自体をもっと小さい方へ変更すべきだと思う。
  • 吹田市全体を見たときに、個々の学校の教育条件が非常に不平等というのは問題である。
  • 学校規模の是正を進めるにあたっては、地域住民のいろいろな感情があると思うが、地域エゴイズムではだめである。客観的な基準を設けて是正すべきである。この場合、市全体の状況と関連させながら個々の地域のことを考える必要がある。

3.適正規模の考え方について

吹田市立小・中学校の適正規模および許容範囲の考え方

  • 小学校の適正規模 12学級~24学級
    許容範囲 7学級~11学級の学校で、特筆すべき教育が期待できる場合
  • 中学校の適正規模 12学級~18学級
    許容範囲
    • 11学級以下の学校で、特筆すべき教育が期待できる場合
    • 19学級~21学級

1.適正規模の表し方について

  1. 小・中学校の規模の適正化を図るにあたっては、まず本来あるべき適正規模を明示する必要がある。
  2. 適正規模を外れる場合であっても、一定の範囲内にあってデメリットを補うだけの特筆すべき教育が行われる場合や、適正化に一定期間を要する場合などの諸事情も考慮して許容範囲を設ける。
  3. 小学校と中学校では、児童・生徒の発達段階に違いがあり、それぞれの発達段階に応じた課題があることや、6学年と3学年という学年数の違いなどを考慮して、別々に基準を設ける。

2.小学校の適正規模の考え方について

  1. 下限については、単学級の学年ではクラス替えができず、人間関係が固定化し、友人関係の広がりや改善の機会が少ないことなどから、1学年各2学級の12学級とする。
  2. 上限については、学校施設を有効に活用しながら多様な教育活動を展開することが可能な規模として、1学年各4学級の24学級とする。
  3. 許容範囲については、全学年単学級の6学級以下では集団生活によって身につけられる資質や能力が育ちにくいことから、7~11学級の範囲内にあって、小規模校のデメリットを補うだけの特筆すべき教育が行われる場合とする。例えば、学校間や地域との連携を深めることにより人間関係の活性化を図るとともに、個に応じたきめ細かな教育を一層充実させるなどの小規模校のメリットを生かした取組みを行うことが求められる。
    【例】
    • 学校内での異学年交流だけに止まらず、近隣の学校との間で学校行事やクラブ活動などの日常的な交流をしたり、学校行事を地域行事と合体させるなどの人間関係の広がりをつくる工夫をする
    • 余裕教室をはじめ学校施設を地域へ開放するとともに、地域の社会資源を積極的に活用し、学校と地域が一体となって子どもを育てる取組みを行う。
    • 学校が地域の拠点となって生涯学習の推進や地域の活性化にも役割を果たすような取組みを行う。
  4. 25学級以上になると、特別教室などの学校施設の利用に制限を受けやすくなり、今後、総合的な学習などを進めるにあたって多様な学習方法等に取り組みにくくなるなど、適切な教育条件が保障できないと考えられるため、上限については許容範囲は設けない。

3.中学校の適正規模の考え方について

  1. 中学生の時期においては社会性の発達が重要な課題であることから、小学校よりももっと幅広い人間関係が築けるようにすべきである。そのため、適正規模の下限については、1学年あたりの人数が小学校の2倍程度になるよう各学年4学級の12学級とする。
  2. 中学生の時期は個性がめざましく発達する時期であり、一人ひとりの子どもの個性の伸長を図ることが大切である。そのため、上限については、個に応じたきめ細かな指導が行いやすく、学校施設を有効活用しながら多様な取組みがしやすい規模を考え、1学年各6学級の18学級とする。
  3. 許容範囲の下限については、11学級以下であっても小学校と同様に小規模校のデメリットを補うだけの特筆すべき教育が行われる場合とし、許容範囲の上限については、各学年とも+1学級までを許容範囲と考え1学年各7学級の21学級とする。

4.学校規模適正化の今後の方向性について

3.の適正規模の考え方に当てはめると、現在、適正規模や許容規模から外れている学校、今後、適正規模や許容規模を外れると予想される学校が数校見られる。これらの学校については、将来の児童生徒数の推移について十分調査し、可能な限り適正規模が維持できるよう検討する必要がある。

1.大規模校の適正化について

大規模校については、学校施設の使用に制限を受けやすいというデメリットがある。現在の教育改革の流れは、これまでのように普通教室での一斉授業を中心とした教育から、体験活動を重視した教育や、情報機器などを活用した多様な学習方法による教育を重視する方向へ進んでいる。また、きめ細かな指導を行うために、教科によっては少人数集団で教育を行う方向にある。こうした今の教育の流れに、ハード面での対応が困難な大規模校については、優先的に適正化に取り組む必要がある。

大規模校の適正化を図る方策としては、まず学校の新設などのハード面の整備が考えられるが、昨今の財政事情や用地の確保など本市の状況には大変厳しいものがあり、また、吹田市全体の児童数が減少しつつある状況を鑑みれば困難であると考えざるを得ない。したがって、今後許容範囲を上回ると予想される学校については、通学時間や通学路の問題などを含めた個別の事情を十分に考慮しながら、校区の調整などの手段によって早急に許容規模・適正規模が維持されるよう検討すべきである。

なお、中学校の規模の適正化については、中学校だけで校区の調整を考えた場合に、全市的な中学校区の再編に結びつく可能性があることや、小学校と中学校の接続関係についても考慮する必要があることから、原則として、小学校の規模の適正化を図ることにより達成する方向で考えるものとする。

2.小規模校の適正化について

小規模校については、適正規模を下回る場合でも、個に応じたきめ細かな教育ができるというメリットがあり、ある程度の規模までは工夫によりデメリットを補うことも可能である。そのため、個に応じた教育の推進や、地域に開かれた学校づくりによる人間関係の活性化などの特色ある教育が行われるように促し、その状況を見極めながら適正化を検討することとする。

しかし、許容範囲をも下回る学校については、集団生活の良さが生かしにくいことや、集団生活を通して培われる様々な資質や能力の向上が期待しにくいことから、早期に適正化に取り組む必要があり、個別の事情等を十分考慮しながら校区の調整や学校の統合などの手段によって早急に許容規模・適正規模が維持されるようにすべきである。

とくに、現在許容範囲を下回る南竹見台小学校と、今後許容範囲を下回ると予想される竹見台小学校については、同じ敷地の中にあるという立地状況から別途議論したが、2校ともに校区が狭く、今後も6学級程度の学校規模が続くことが予想されるため、統合することが望ましいと考える。統合した場合には、各学年2学級の12学級程度で推移することが予想され、クラス替えができないなどのデメリットが解消できるとともに、小規模のメリットも生かせる規模になる。また、統合した場合、住区に1小学校・1中学校となるが、無理に2小学校・1中学校の原則は適用せず、現在の学校の立地状況や地域の特性を生かした取組みを行うモデル地域にすることを提案する。例えば、この地域では、これまでそれぞれの小・中学校と地域が密接に連携して子どもの健全育成に取り組んできた経緯があることから、小中一貫で地域と一体になった教育活動を行うモデル地域にすることなどが考えられる。ただし、その取組みの成果については、市内各学校・各地域に情報発信し、市全体の教育の活性化に貢献できるようにすべきである。また、統合した際不要となる施設については、地元の意向も聞きながら利用方法について検討する必要があるが、できるかぎり学校教育との関連で生かす方向で考えるべきである。例えば、生涯学習に活用できる複合施設などにして、学校との連携や交流を深めたり、総合的な学習などですべての学校が有効に活用できるようにするなどのことも考えられる。

3.他の適正化方策について

1.2.が、今後適正化を進めるにあたっての基本的な方向性と考えるが、校区の調整で適正化を図ることがどうしても困難な場合には、個々の地域の状況を勘案しながら、他の方策についても検討する必要がある。例えば、学校間交流の促進などで教育の活性化が期待できる場合は、一部の地域で大規模校の一定人数の児童生徒を校区外の小規模校へ通学させることや、校区を状況に応じて柔軟に調整できるようにすることなども含め、是正のための可能な限りの方策について検討すべきである。

5.おわりに

本検討会議では、吹田市立の小・中学校が小規模化、また一方で大規模化している現状を踏まえ、適正規模の基本的な考え方と今後の方向性について検討を進めた。検討の過程においては、法令等における規定や学級編制・教職員配置基準、平成14年度(2002年度)から実施される新教育課程などについても理解を深めながら、小規模校・大規模校のメリットやデメリット、地域社会の在り方なども含めて、様々な意見が出され活発な討議が行われた。しかし、この検討会議における検討は、あくまで適正化を進めるための出発点であり、今後、吹田市教育委員会が適正化を実施するにあたっては、地域の諸事情等も含めてさらに詳細な検討をする必要がある。そのため、専門的な立場で研究する者も加えて、引き続き具体的方策の検討に着手すべきである。その際、この意見書が十分尊重されることを願うものである。

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