ようこそ平和祈念資料館ライブラリーへ 平和祈念資料館の図書の紹介(2022年)

ページ番号1006393 更新日 2022年9月21日

平和祈念資料館には、約4,000冊を超える広く「平和」に関する書籍を所蔵しています。
平和祈念資料館の職員がお勧めする本や、ぜひ読んでいただきたい本を紹介していきますので、ぜひご利用ください。

2022年

3月

『劇画 ヒットラー』

著 水木 しげる
ちくま文庫

『ゲゲゲの鬼太郎』の作者として有名な水木しげるさんによるアドルフ・ヒトラーの伝記漫画です。
若い頃のヒトラーは、自称「芸術的大天才」「芸術的画家」という青年で、自尊心が強く、働くのが嫌いで、純情な一面があるかと思えば、気に入らないことがあると乱暴なふるまいをするという、近くにいると少し困った人ではありましたが、どこかには必ずいるような人でした。
その彼が、ドイツ国首相となり、世界中に知られる独裁者として最期の日を迎えるまでの話が描かれているこの本は、ヒトラー関連の本を初めて読む方にも大変読みやすくなっています。
ご自身も過酷な従軍体験をしておられる水木しげるさんは、ヒトラーを一人の普通の人間として描くことで、ヒトラーの誕生や彼に関係する出来事が、あの時代だけの特別なことではなく、いつでも起こりうることであると伝えたい思いもあったのかもしれません。

2月

『非国民な女たち 戦時下のパーマとモンペ』

飯田 未希 著
中央公論新社

今回ご紹介する本は、「戦時に相応(ふさわ)しい服装」に従わなかった女性たちや、彼女たちのある種の「抵抗」を支えた、女性の外見作りに関わる職業の人々が戦時下をどう生きたかに焦点を当てた本です。
戦時中の女性は、全員モンペを履いて、まっすぐな髪を束ねていたのでしょうか。そうではなかった、と著者は言っています。
意外に思われるかもしれませんが、現在私たちが想像するよりもずっと多くの女性たちが戦争中にパーマをかけ、スカートを履いておしゃれを追求していたようです。
それにも関わらず、女性の非国民の典型が贅沢の象徴としてのパーマネントや流行の洋装であり、戦時に「正しい」服装がモンペでした。

1937年の日中戦争開戦以降、政府の外郭団体である国民精神総動員中央連盟等による女性の髪形や服装に対する厳しい指導が続き、大流行していたパーマネントも禁止になりました。美容業者や洋裁学校等は、おとなしいパーマネント、古着を再利用した服、モンペよりおしゃれな「ズボン」などを提案して、なんとか事業を続けられるよう努力しました。
女性たちは、新聞投稿などで意見を主張することもありました。たとえば、1938年には、パーマ批判の新聞投稿に対し、働く女性が反論しています。朝早い出勤にいちいち髪を結うことは大変で、パーマネントをかければ簡単に身支度ができること、能率的な髪形を選ぶことをなぜ親不孝とまで言われなくはいけないのか、という内容でした。
戦後、パーマネントや洋装化が急速に進んだことを「アメリカ化」として捉えられがちですが、著者はそれを女性たちが戦争中を通じて求め続けていたものだったと考えています。

広辞苑第7版には、非国民とは「国民としての義務を守らない者。国家を裏切るような行為をする者。」と書かれています。1937年のパーマネント排斥運動から85年がたちました。この本を読んで、髪型や服装から「非国民な女」とよばれた女性たちとその時代について考えていただけたらと思います。

1月

『父と暮せば』

井上ひさし
新潮社

この作品の舞台は、まだ原爆の記憶新しい昭和23年の広島です。
この町に暮らす若い娘と、原爆で亡くなって幽霊になった父親という、登場人物がたった二人だけのお芝居の台本になっています。
何度も舞台上演されていますし、映画化もされていますので、すでに内容をご存知の方も多いかと思います。
娘は、自分だけが生き残って申し訳ない、ましてや自分が幸せになったりしてはますます申し訳がないと思い悩みながら生きており、身近にある幸せまで手放そうとしてしまいます。幽霊になって現れる父は、愛する娘の幸せを願い、あれこれと手助けをするのですが、娘はかたくなに心を閉ざし続けます。
全編広島弁でのやり取りが、さらに二人の心の切なさや愛情を増幅させ、そこに何とも言えないユーモアもあります。声に出して読んでいただければ、胸にぐっと迫るものがあると思います。
父と娘の愛情というだけでも十分に感動を与える作品なのですが、それを原爆という重いテーマと併せることで、さらに心にしみる忘れられないお話になっています。
作者の井上ひさしさんは、この作品を世に出してから亡くなるまでの15年間に、自らの戦争体験と正面から向き合い、多くの作品を残しました。『残りの人生を考えたとき、戦争をかろうじて経験している自分が描き残さなければならない事柄がある』、とインタビューで語っておられます。
生き残った側の哀しみというのは戦争に限らず、震災などの災害や事故の場合にも感じる共通した心理です。
ぜひ世代を超えてお読みいただければと思います。
なお、当館では「父と暮せば」(出演:宮沢りえ・原田芳雄・浅野忠信)のDVDを所蔵しておりますので、ご来館いただければ個人視聴が可能です。

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