ようこそ平和祈念資料館ライブラリーへ 平和祈念資料館の図書の紹介(2017年)

ページ番号1006391 更新日 2022年9月21日

平和祈念資料館には、約4,000冊を超える広く「平和」に関する書籍を所蔵しています。
平和祈念資料館の職員がお勧めする本や、ぜひ読んでいただきたい本を紹介していきますので、ぜひご利用ください。

2017年

12月

『マップス 新・世界図絵』

アレクサンドラ・ミジェリンスカ&ダニエル・ミジェリンスキ・著
徳間書店

資料館の蔵書の中では一番大きな本で、たて37センチ、よこ28センチあり、ひときわ目を引く存在です。
この本の作者は、ポーランドの絵本作家のご夫妻です。丸3年の歳月をかけて、一つ一つ丁寧に描かれたイラストは4000点以上にものぼり、世界42か国のことが取り上げられています。眺めるたびに新しい発見があり、わくわくする絵本です。
そして、わくわくするだけでなく、各国の人口や面積などの基本データはもちろん、地方の特徴も丹念に調べられていて驚かされます。例えば、「日本」。原爆の被害に遭った長崎の山王神社の一本柱の鳥居が描かれています。ポーランドの人がここまで調べ、絵本に取り上げられたことに感心します。
いろいろな国があって、それぞれに民族や宗教や食べるものも違っています。そういう違いを知ることから理解が進み、平和につながっていくのではないでしょうか。世界各国のニュースにふれる時、この本を広げてみると、また理解が深まるでしょう。
お子さまから大人の方まで、それそれの年代に合わせた見方ができる絵本ですので、ご家族で楽しみを共有していただける一冊です。

11月

『コミック昭和史全8巻』

水木しげる・著
講談社

漫画『ゲゲゲの鬼太郎』の作者の水木しげるさんが描いた「昭和史」で、当資料館でも貸出回数は多く、たくさんの方に読んでいただいている作品の一つです。
この『コミック昭和史』は、最初の貸出のとき「ちょっと、昭和史を勉強してみようかと思って…」とおっしゃる皆様のうち、ほとんどの方が最後まで読まれます。全8巻を読破する魅力が作品自体にあるのでしょう。
作中、実際に水木さんが体験された軍隊生活部分は、ご自身が登場人物としてリアルに描かれたり、当時の背景や歴史を説明する部分は『ゲゲゲの鬼太郎』の有名なキャラクター「ねずみ男」が解説するなどわかりやすく、また、膨大な情報量のある「昭和史」が、漫画という形になると意外に頭の中に入り、絵の持つ力の凄さを感じさせます。
関東大震災から始まり、昭和を振り返るところで全8巻は終了します。どの巻からでも読んでいただけますので、まずは水木しげるさんの世界から、「昭和史」をのぞいてみてはいかがでしょうか。

10月

『8月6日のこと』

文:中川ひろたか
絵:長谷川義史
発行:ハモニカブックス
発売:河出書房新社

幼稚園や保育園で大人気の「あそびうた」のライターや、絵本作家として活躍されている中川ひろたかさんが文章を書き、子どもから大人の方まで幅広い人気を誇る絵本作家の長谷川義史さんが絵を担当した絵本です。中川さんのお母さんは瀬戸内海の島の出身で、そのお母さんの戦争体験をもとに、この本は作られました。この作品は、8月6日に起こった広島への原爆投下という悲劇と、瀬戸内海の平和な風景との対比を、長谷川さんの独特な世界観により鮮明に描いています。また、この絵本は視覚的表現にとどまらず、その絵からは、瀬戸内の穏やかな波の音と、それをかき消す原爆の爆発音までもが聞こえてくるようです。日本語とともに英語も併記されていますので、どなたにも読んでいただける作品です。当館の秋の企画展『長谷川義史絵本原画展へいわってすてきだね』では、この絵本の原画も展示され、長谷川義史さんの平和への思いがいっぱい詰まった企画展となっています。ぜひ、当館に足を運んでいただき、長谷川さんの平和への思いに触れてみてください。

9月

『イレーナ・センドラーホロコーストの子ども達の母』

平井美帆・著
汐文社

ポーランド人のイレーナ・センドラーは、第2次世界大戦中にドイツ軍に占領されていたポーランドで、2,500名のユダヤ人の子どもたちを救った女性です。
1999年、アメリカの女子高生たちが、1994年に掲載されたイレーナについての記事「もう一人のシンドラーを知っていますか?」を取り上げ、詳しく調べていくうちに、それまでほとんど知られていなかった彼女の勇気ある行動に心を動かされ、実話を元にしたお芝居を歴史研究コンテストで発表することになりました。
その後、大人になってからも、女子高生たちは様々な活動をし、イレーナの偉業は注目されるようになりましたが、それは戦争が終わって60年あまり経ってからのことでした。
吹田市出身のノンフィクション作家である著者が、イレーナの勇敢な人生を綴るとともに、ホロコーストについて、子どもたちにもわかりやすく丁寧に書いています。
再びこのような悲劇が起こらないよう、過去の過ちを子どもたちにも学んでもらえる1冊です。

8月

『14歳<フォーティーン>満州開拓村からの帰還』

澤地久枝・著
集英社新書

著者である澤地久枝さんが14歳の少女だったころのお話です。
戦争が終わったと聞いた瞬間、「ああ、神風は吹かなかった」と真面目に思うほどの軍国少女だったという著者が、終戦前後の二年間に何を見て、何を体験したのか、記憶をよみがえらせながら、あえて自分のことを「私」ではなく三人称の「少女」と記し、淡々とした文章で綴っています。
この本を読んだ方の中には、「著者の体験は、当時満州に住んでいた人々のなかでは、まだまだ恵まれていた環境だった」という感想もあるようですが、14歳の著者にとっては、「少女」を「考えることを停止し、語らない女の子」にしてしまうのに十分なものでした。
多感な時期に激動の時代を過ごし、戦争に負けた国の人間になったことの苦労や悲しみが彼女をそう変えたのです。
著者本人の言葉ですが、「本が好きで、周囲の14歳よりいろいろなことがわかっていた」ような気になっていたから、なおさら強く感じるものがあったのかもしれません。
当時の自分と同じ14歳の人たちに読んでもらいたいと書かれた本ですが、大人のかたにも読みごたえのある内容です。
時代の流れに巻き込まれてしまう怖さと、「平和」の大切さについて、考え続けていかなければいけないと思わせてくれる一冊です。

7月

『平和ってなんだろう「軍隊をすてた国」コスタリカを考える』

足立力也・著
岩波書店

1980年代の冷戦時代に、国の政策として軍隊を持たないことを選んだ国・コスタリカ。この国を訪れ研究した著者が、コスタリカの歴史、国民の価値観、文化を通して、平和とは何かを説いている作品です。
本の中では、中米の国・コスタリカが植民地支配からの独立、内戦、武力紛争を経た歴史を紹介し、その中で育まれた国民性にも触れています。軍隊を持たない国として生きることを選択したコスタリカの人々の価値観こそが「平和」を作り上げていることをこの本から知ることができます。
また、日本人にとって、平和は戦争のないことという意味だけでしか捉えられていないのに対し、コスタリカ人にとっては、平和の意味の中に、うれしい、安心、愛してるなどの感情を含んでいるといいます。平和に対する意識が日本人と違い、そのことが「軍隊を持たない」という選択肢につながっているのかもしれません。
そういう点で、とても興味深い1冊です。

6月

『わすれたっていいんだよ』

上條さなえ・文
たるいしまこ・絵
光村教育図書

亡くなったおじいちゃんと一緒に始めた沖縄料理店で腕をふるうおばあちゃん。お店の名前にもなっている沖縄の方言「なんくるないさー」(どうにかなるさ)という言葉で、いつも明るくお店に来るみんなを励まし、家族のお誕生日やおじいちゃんや自分の両親の命日はごちそうをいっぱい作ります。なのに、おばあちゃんは、自分のお誕生日は「忘れた」と言い、沖縄料理は何でも作れるのに「ムーチー」という料理だけは作れないと言います。そのことを孫のるりは不思議に思っていました。
そんな時、おばあちゃんが認知症になったことで、その謎が解けたのです。
おばあちゃんの子どものころ、沖縄では日本で唯一の地上戦があり、住民が戦争に巻き込まれ、おばあちゃんのおかあさんは亡くなったのです。
認知症になったことは悲しいことですが、おばあちゃんはつらい思い出を忘れられることができました。家族にとっては複雑な思いでしょう。戦争というのは、人の心をこんなにも傷つけてしまうものだということを考えさせられる一冊でした。

5月

『絵本で学ぶイスラームの暮らし』

松原直美・文
佐竹美保・絵
あすなろ書房

冒頭の「はじめに」に、日本の人口の10倍以上の人々が「イスラーム」(この本では、単語をより発音に近い表記にしているため、「イスラム」ではなく「イスラーム」と表記しています。)を信じていると書かれています。
イスラーム教徒はどんな生活をし、どんな人たちなのか?
そういう素朴な疑問を、10歳のアフマド君とその家族の生活が描かれたこの絵本は
教えてくれます。もちろん、この絵本だけで彼らの宗教や文化を全て知ることはできませんし、ほんの少し、覗き見ただけかもしれません。
しかし、「お祈り」や「断食」について、なぜイスラーム教徒の女性がスカーフをかぶっているかの理由などがわかります。
今の子どもたちが、いろいろな世界の人たちと知り合っていくときに、まずは「相手を知ること。理解すること」から関係が始まるのではないでしょうか? 「イスラーム教徒」の生活を少し覗いてみてはいかがでしょう。

4月

『吉永小百合の祈り』

NHKアーカイブス制作班・編
新日本出版社

女優・吉永小百合さんが、長年、原爆詩の朗読会をされているのはご存知の方も多いと思います。この本は、詩の作者である被爆者の方々との交流や詩をめぐる物語など、朗読会の活動を綴ったものです。
女優として様々な役を演じる中で、原爆や戦争を追体験してきた吉永さんならではの語り口が、戦争を体験した人はもちろん、戦争を知らない子どもたちにも深い感動を与えています。
音楽家・坂本龍一さんや、ギタリスト・村治佳織さんの演奏と吉永さんの朗読を融合させた活動について、触れられ、
「若い世代(村治さん)に弾いてもらって、なにか生きる力みたいなものを、詩の向こう側に感じさせたい」という強い思いを語っていらっしゃいます。
これから、平和であることの大切さを後世にもつなげていくには、吉永さんの活動のように”語り継ぐ″ということが不可欠ではないでしょうか。
最後に、吉永さんの印象深い言葉で、締めくくりたいと思います。

「”戦後何年″という言い方が、ずっとつづいてほしい。」

3月

『戦争といのちと聖路加国際病院ものがたり』

日野原重明・著
小学館

装丁のイラストがかわいくて思わず手に取りました。
聖路加(せいるか)国際病院は日本では有名な病院であり、著者がお勤めになっていることは知っていましたが、戦争とどうつながるのだろうと興味が湧き読んでみました。
聖路加国際病院の前身である聖路加病院は、日野原さんが生まれる前にアメリカ人の宣教医師によって開かれ、大正6年(1917年)に聖路加国際病院となりました。進んだアメリカの医療技術を取り入れた近代的なこの病院は、アジアで最高レベルの病院を目指していました。
日野原さんがこの病院に就職した昭和16年(1941年)に太平洋戦争が始まりました。アメリカからの援助や技術協力によって運営されていたこの病院には、アメリカ人の医師や職員もたくさん働いていましたが、日本がアメリカと戦うことになり、彼らはアメリカに帰って行きました。病院は、政府の統制を受けることになり、キリスト教の聖人の名前からつけた病院名を「大東亜中央病院」と変更させられました。塔屋に掲げられた十字架も外さねばならなくなりました。
戦争がはげしくなり食糧不足や医療品不足も深刻になるなか、東京大空襲が起こりました。明治44年(1911年)生まれの日野原さんは、「青春時代のほとんどを戦火のなかですごした」とおっしゃるように、第一次世界大戦、日中戦争、第二次世界大戦、太平洋戦争を経験されました。そんな日野原さんが、東京大空襲の時に地獄絵のような光景を見、医師でありながら救えなかった命が多くあったことや、戦争は二度と起こしてはいけないということを、戦争を知らない世代の人にも分かりやすく語りかけていきます。
人としての尊厳を奪う戦争は「いじめ」ととても似ていると日野原さんは言います。戦争やいじめをなくすには、許すこころを持つことが大切で、憎しみからは何も生まれない。これ以上の言葉はないと思いました。104年の人生(発行当時)をおくってこられた日野原さんの究極のメッセージです。

2月

『綾瀬はるか「戦争」を聞く』

TBSテレビ『NEWS23』取材班・編
岩波ジュニア新書

広島出身の女優・綾瀬はるかさんが祖母の被爆体験を聞くことからスタートし、広島・長崎・沖縄・ハワイを巡り戦争体験者を訪ねていきます。
この本は、以前TBSテレビで放送された内容をまとめたものです。大河ドラマで主演したこともある綾瀬はるかさんがレポーターということで、普段は戦争について興味がなくても、番組をご覧になったという方も多かったのではないでしょうか。放送だけで終わらせず、書籍化されることで、番組を見なかった方にも伝え、残していけるのはとても意味があることです。
各章は短いながらも、真珠湾で戦死した恋人を今も思い続ける女性、神に祈り続け戦後を一人で生きてきた女性など、それぞれの方のお話はとても心にささります。戦争被害者は、戦後長い年月がたっても苦しみ続けていらっしゃるのです。
各章には、放送当時の白黒の写真が掲載されていて、どの写真でも綾瀬はるかさんは、相手の方と目線の高さを合わせ、あるときには手をとりながらお話を真剣に聞いています。彼女のこの姿勢が、最初は「戦争の話はつらすぎてしたくない。」という方々のお話をひきだせたのではないでしょうか。

1月

『この世界の片隅に前・後編』

こうの史代・著
双葉社

現在、全国で上映されているアニメ映画『この世界の片隅に』の原作漫画です。
戦争を題材にした作品は数々ありますが、この作品は一般女性を主人公に、戦時中、人々が過ごした日常の生活での等身大の姿を描いています。
物語は、主人公・すずの少女時代から始まります。広島のごく一般的な家庭で生まれ育った彼女は、絵を描くことが好きな子どもでした。そんなすずも年頃になり、軍港・呉に嫁ぎます。今では考えられませんが、その当時の結婚は親が決め、結婚式当日まで相手の顔も知らないことは当たり前でした。
話は、すずの嫁ぎ先での生活を中心に、人々が戦時中の大変な日々をどのように生きてきたかが細やかに描かれ、また、空襲により身も心も傷ついたすずの心の内が、静かに描かれているのが印象的です。
戦争は特別な人たちの間で起きたことではないことを痛感します。
こうのさんのやさしいタッチの絵は戦争の悲惨さも柔らかく描写し、つつましやかにかつ一生懸命生きていた一般庶民の心情にスポットを当てた作品となっています。

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