ようこそ平和祈念資料館ライブラリーへ 平和祈念資料館の図書の紹介(2018年)

ページ番号1006390 更新日 2022年9月21日

平和祈念資料館には、約4,000冊を超える広く「平和」に関する書籍を所蔵しています。
平和祈念資料館の職員がお勧めする本や、ぜひ読んでいただきたい本を紹介していきますので、ぜひご利用ください。

2018年

12月

『パレスチナに生まれて』

ナージー・アル・アリー著
いそっぷ社

私たち日本人にとって中東の問題、特に宗教や民族に絡む問題は理解が難しく、この映画を見てさまざまな疑問が湧き、風刺画なら分かりやすいのではないかと思い、この本を手に取ってみました。
1987年、50歳の若さで暗殺された著者のアリー氏は、パレスチナで生まれ、南レバノンの難民キャンプで大きくなりました。大人になって移住したクウェートで、創作した難民の子どものキャラクター「ハンダラ」の視点で風刺画を描き始めました。
アリーの描いた風刺画には、「なるほど」と納得できるものもあれば、分かりづらいものもありますが、巻末には、詳しい解説がついており、理解の手助けとなるでしょう。
宗教や民族の問題以外に、石油という地下資源が豊富であるということが災いとなり、権力者と貧しい者との格差を生んでいるということはなんとも皮肉なことです。その冨を取り巻くアメリカやヨーロッパの国々の思惑が渦巻く中、同じ民族でありながらひと握りの権力者が大多数の貧しい人たちを虐げていることが分かります。
極東の地に住む私たちにとって、中東のことは遠いことと思いがちですが、みなさんもこの本をきっかけに、パレスチナ問題について一度考えてみてはどうでしょうか。

11月

『シベリヤの月 わが捕虜記』

蓮井 秀義・著 西岡 秀子・編 かもがわ出版・発行

『満鉄特急あじあ物語 栄光の蒸気機関車』

林青梧・著 講談社・発行

今月は2作品をご紹介します。
『話そう!聞こう!引揚げ体験!(戦争体験)』というイベントを開催したときの参加者の方からお勧めいただいた本で、両作品とも、参加者の方の、引揚げや外地での生活に関わることが描かれています。
『シベリヤの月』は、参加者の方が遼陽に住んでいるときの担任である蓮井氏の、シベリヤ抑留されたことについての話です。ご本人の子ども時代の写真も掲載されています。
『満鉄特急あじあ物語』は参加者の方の奉天から引揚げて来た経緯が描かれており、ある人の進言でルートを変更した結果、難を逃れ、無事に日本へ引揚げてくることができたそうです。
これら作品を通して、お話して下さった方の戦争体験がより鮮明になりました。
戦後生まれの私たちにとって、過去のことだと捉えがちな戦争関連の本の内容も、そういった体験をされた方が語ってくださることで、現実味を帯び、戦中を生きのびて来た方々の苦労をしっかりと感じ、心にとどめることができるのではないでしょうか。
みなさんには、本を読むことと併せて、機会があれば、ぜひ、直接体験者の話を聞いていただき、より深く平和の大切さを感じ取っていただければと思います。

10月

『戦争中の暮しの記録保存版』

編者・暮しの手帖編集部暮しの手帖社

雑誌「暮しの手帖」の昭和43年(1968年)特集号を、保存版として単行本化した1冊です。
戦後20年が過ぎたころ、この特集号の発行にあたり、読者に戦争体験についての原稿を募集すると、1736編の原稿がよせられました。体験者の、年齢や性別、暮していた場所もさまざまですが、編集者はあとがきで、応募作品の多くが「あきらかに、はじめて、原稿用紙に字を書いた」と思われ、「これを書きのこしておきたいという切な気持から」書かれていることが文章から感じられることが印象的であったと述べています。
人々の数だけ「戦争体験」があり、その悲しみや苦労は、決して順番のつけられるものではありません。
毎日の生活を平穏に過ごしたいと願う、ごく普通の人々が、戦争に巻き込まれ、その願いが叶わなかった、そういったことを知ることも「戦争の恐ろしさ」について考えていく一歩ではないでしょうか。
昨年の春、暮しの手帖社では再び「戦中・戦後の暮しの記録」を題材とした原稿を募集しました。当資料館に配架していた原稿募集チラシを見た見学者の方が、ご自身の体験を話してくださることが何度かありました。もしかすると70年以上たっても消えない思いを抱えている方が、皆様のすぐ近くにもいらっしゃるかもしれません。
「戦中・戦後の暮しの記録」は今年7月に出版されました。当資料館でも所蔵していますのであわせて読んでいただければと思います。

9月

『花へんろ夢の巻』

早坂暁・著勉誠出版

1985年~1988年に、NHKで放送されたドラマ「花へんろ」のシナリオを後年、小説化された作品です。
時代は、大正末期から昭和初めにかけての激動の時代。日本がどのように戦争に突き進んでいったかが丁寧に描かれており、その時代の渦の中で、庶民が戦争に巻き込まれてく様子が、四国のお遍路道の小さな町を舞台に繰り広げられていきます。
瀬戸内のお遍路道の商家に生まれ育った早坂さん自身の実体験をもとにこの作品は描かれています。
「昭和とはどんな眺めぞ花へんろ」
昨年末に亡くなられた早坂さんの遺した言葉にはなにか大事なメッセージが含まれているように感じました。
昭和に続き、まもなく平成も終わろうとしています。戦争は遠い昔の出来事のようになってしまいましたが、今一度、戦争に突き進んでいった昭和の時代のことを振り返り、次の時代は平和であって欲しいと願うばかりです。
物語は、『花へんろ風の巻』『花へんろ海の巻』に続きます。

8月

『兵隊になった沢村栄治ー戦時下職業野球の偽装工作』

山際康之・著ちくま新書

今年も高校球児にとって大切な夏の甲子園がやってきました。
昨年、優勝した花咲徳栄高校の選手たちが、練習の忙しい合間を縫って、当館を見学してくださいました。
その新聞記事には、「今は戦争がなくて野球をやらせてもらっているけれど、戦時中の人はそれもできなかった。ありがたく思い、楽しくプレーしたい」と選手の感想が載っていました。
戦時中といっても、この本の主役である沢村栄治が活躍した時代は、プロ野球は職業野球といわれ、戦況が悪化するまでは、戦意高揚のためや「お国の為」に国防費献納試合や兵隊さんへの慰安試合などが行われていました。
その後戦況が悪化し、出征した沢村栄治やその仲間たちは、兵隊として優れた強肩を、手りゅう弾を投げるということでしか生かすことができなくなりました。また戦地で負傷し、2度とマウンドに立てなくなった仲間を見送る辛さなど、この本からは花咲徳栄の選手の言葉「野球をできることのありがたさ」が滲みでてくるようです。
なんとか選手たちに野球をやらせてやりたい、職業野球を存続させたいと願い、時局に迎合したように見せかける行動をとるなど、野球連盟の人々の並々ならぬ苦労も描かれています。
名投手、沢村栄治は3度出征し、戦死という形で、野球人生を終えます。
平和であるからこそ、スポーツ楽しむことができるのだということをひしひしと感じる作品です。

7月

『氷の海を追ってきたクロ』

文・井上こみち
絵・ミヤハラヨウコ
株式会社学研教育出版

資料館の見学に来た小学生に「戦争が終わった次の日からすぐ、元通りの平和で、普通の生活になるよね?」と話しかけられたことがあります。
実際は、戦争が終わったとしても、亡くなった方やけがをした方、焼けてしまった家は元に戻りませんし、おなかいっぱい食べることもできません。
その小学生にとって、ゲームの世界のように、戦争が終わるとすぐ最初の場面に戻ると考えていたのでしょう。
今月、ご紹介するこの『氷の海を追ってきたクロ』を読んだら、子どもたちはどんな風に思うのでしょう。
この本に描かれているのは、戦後11年間、帰国することができずシベリアで働いた人々の実話です。中国で終戦を迎えたあと、「日本に帰る船が出る港まで行く」という列車に乗ると、到着した場所は日本からさらに遠い極寒のシベリアで、そこでは厳しい労働の日々が待っていました。これを「シベリア抑留」といいます。
厳しい労働に耐えるだけだった人々はある日、子犬と出会い、「クロ」と名付けられたその子犬は、人々を癒し、勇気づけ、彼らが人間らしい心を持ち続ける支えになります。やがて帰国が決まり、「犬は連れていけない」と決められていた別れの日に、クロと人々の間にドラマ以上の現実が起こるのです。
戦後、外国から日本へ戻ることは「引揚げ」と言われ、大阪の近くでは京都の舞鶴港が、引揚げて来た船が戻る港として有名です。この本の人々もシベリアから舞鶴へ引揚げてきました。

6月

『戦時中の日本そのとき日本人はどのように暮らしていたのか?』

歴史ミステリー研究会・編彩図社

この本のもくじには、「『赤紙』とは限らなかった召集令状」「当時のJポップだった軍歌」「ケシの実を採取していた子供たち」「軍人になるため必要だった徴兵保険」など、興味を引くような見出しが並んでいます。戦時中の話は聞いたり読んだりしたことがあっても、実際の生活はどうだったのだろうと考えることがありませんか?
例えば、配給制について、食糧や衣料品などが切符制になり、切符さえあれば品物が手に入るような気がしますが、もちろんお金を払わないと品物は買えませんでした。一つの物を買うのに、何時間も並ぶこともよくありましたし、お金と切符があっても、品不足で買えないことも多くあったのです。そんな中で、当時の人々の中にはあの手この手で少しでもたくさんの食糧をもらえるようにと不正をする人もいたことが書かれており、それなりにたくましく生きている人もいたことがわかります。
しかし、多くの人は、政府によって理不尽なことを強いられ、おかしいと思っていても声を上げることが出来ませんでした。戦争が誰も幸せにしていないということがよくわかります。
この本は50以上のトピックスからなっており、当時の日本の様子を知ることが出来る一冊です。

5月

『なるほど知図帳世界2018ニュースと合わせて読みたい世界地図』

昭文社出版制作事業部・編昭文社

毎年発行されている『なるほど知図帳』。
今年度の『なるほど知図帳』の特徴は、タイトル通り、ニュースと併せて読むことにより、今世界で起きている出来事や情勢がより理解しやすくなっています。
現在、世界の4大勢力とされているアメリカ、ロシア、中国という大国を中心に形成される勢力圏と、イスラム教国の集合体の勢力図を地図上で示すと、勢力圏の境界付近で紛争や領土問題が起こっていることがこの本から明らかになり、大変興味深いです。
また、現在、世界的リーダーの不在を意味するGゼロの時代といわれる中で、各国のリーダーの思惑や国内外の問題、関係性を地図上に表すことにより、地政学的な観点からも世界の平和について考えることができます。
経済や環境、教育問題など全般的に世界の平和について考えるきっかけになる一冊です。

4月

『昭和二十一年八月の絵日記』

山中和子・編/養老孟司・解説 株式会社トランスビュー

終戦一年後の昭和21年、小学5年生の少女が夏休みに書いた絵日記を、当時のクレヨンや紙の色をできるだけそのままに再現した絵本です。
食糧はまだ配給制で不足していて、8月26日の日記には、「御はんを食べたのは二・三回であとは、代用食ばかり」「お魚は、一度だけ」と書かれています。食糧不足を解消するため、母親は稲やカボチャを作り、少女も自分の畑で瓜を作っています。足りないものはたくさんあるけれど、人々は工夫し力強く生活して、少女の感じた季節の移ろいや、日々の暮らしが美しい文章で書かれています。
当資料館には、戦時中の小学生が書いた日記を何冊か所蔵しています。その日記には、戦闘機が描かれ、「日本の勝利」を疑わない「軍国少年」「軍国少女」の姿があり、子どもも戦争に巻き込まれている様子がよくわかるものです。
この『昭和二十一年八月の絵日記』には、食べ物の不足を嘆いたり、祖母の訪問や友達に会うのを楽しみにしていたり、焼跡に飛んできたB29を「写真でも撮りにきたのかな」と先生と一緒にずっと見ていたり、という話も描かれています。戦時中には書けなかった素直な感情が書かれており、子どもが子どもらしく生きることが出来る「平和」の大切さがよくわかります。
巻末で養老孟司さんの書かれている解説も、戦後の発展で得たもの、失くしたものについて書かれていて興味深い内容です。
ぜひ読んでいただきたい1冊です。

3月

『ピカドンだれも知らなかった子どもたちの原爆体験記』

講談社・編講談社

広島の街は、72年前に一発の原子爆弾により壊滅しました。
爆心地付近で当時4~6歳で被爆した子どもたちが小学校5~6年生になったときに、被爆当時のことを作文に書きました。それが作文集「原爆の思い出」で、爆心地から約3kmのところにある広島市立己斐(こい)小学校の倉庫から約50年ぶりに発見され、本書編集のもとになりました。
肉親を亡くしたり、家がつぶれたり、そしておびただしい数のケガ人や死体を目の当たりにしたことが、拙い文章ながら綴られており、当時のことを鮮明に記憶していることがわかります。なかでも、原爆投下後に降ったといわれる「黒い雨」は、ほとんどの子どもたちの記憶に残っているようです。
この辛くて悲しい被爆体験を、この子どもたちは、死ぬまで忘れることはないでしょう。戦争がこれほどまでに子どもたちの心を傷つけたということ、私たちが、平和を守っていかなければいけないということを、感じさせられます。

2月

『ながさきの子うま』

大川悦生・さく宮本忠夫・え新日本出版社

『おこりじぞう』とともに、原爆のおそろしさを子どもたちに伝える図書として有名な作品で、アニメ映画化もされています。
まだ馬の引く荷馬車がたくさん見られた当時の長崎で、生後4か月の子うま「いなさ号」は、かあさんうまと暮らしていました。
8月9日、長崎に落とされた原爆は、人間だけではなく動物の命をも奪い、かあさんうまも犠牲となり、「いなさ号」はひとりぼっちになってしまいます。その後、同じように母親と弟をなくした少年と出会い、「戦争のない遠いところ」へ行こうと、子うまと少年は傷ついた体で、一緒に歩きはじめます。
映画のように印象的な場面で終わるお話ですが、前半のかあさんうまの言葉の力強さが最後までこのお話を引っぱっていきます。
「うまは、ころしあいをしません。」
「もう、にんげんがにんげんをたすけることさえできなくなったみたい」
「にんげんたちのせんそうで、ほかのいきものもころされてしまうんです。」
のどかだった長崎の町を、一瞬で火の海にしてしまった原爆の恐怖を、かあさんうまのしずかな言葉がより強調しています

1月

『愛は、あきらめない』

横田早紀江・著
いのちのことば社・発行

著者・横田早紀江さんといえば、拉致被害者・横田めぐみさんのお母さんであることは、皆さんもご承知のことと思います。当館でも、横田さんの著書を紹介したり、拉致問題に関する作品を映画会で取り上げたりするなど、啓発事業を行ってきました。
横田さんについて感じるのは、娘さんが拉致されて40年もたつのに、「絶対に帰ってくる」という変わらぬ強い信念を抱き続けていること、なぜ心が折れず、これほど凛とした姿勢を貫き続けることができるのだろうということです。
この作品からは、横田さんの強い面だけではなく、自分たち拉致被害者の家族に起きた突然のできごとに嘆き、悲しみ、希望を失いそうになる横田さんの心の揺れ動きをストレートに感じることができます。同時に、「横田早紀江さんを囲む祈りの会」で語られた約2年分の内容と、横田さんと信仰との関わりに触れられており、横田さんの心を支えるものが何であるかの一端を知ることができます。
この作品を通して、横田さんの素直な思いを感じ取っていただければと思います。

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