ようこそ平和祈念資料館ライブラリーへ


平和祈念資料館には、約4,000冊を超える広く「平和」に関する書籍を所蔵しています。

平和祈念資料館の職員がお勧めする本や、ぜひ読んでいただきたい本を紹介していきますので、ぜひご利用ください。


2020年

11月

 『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』


庭田杏珠・渡邉英徳(「記憶の解凍」プロジェクト)

光文社

 今回は少し異色な書籍のご紹介です。

作者である庭田さんは広島出身の現役大学生です。高校生の時から平和を願う活動を積極的に行っておられました。

彼女は現在平和公園になっている「中島地区」がかつて繁華街であった頃の1枚の写真と、当時を知る1人の被爆者との出会いから、そこにあった平和な暮らしが1発の原子爆弾によって永遠に失われたことを多くの人々に感じてもらいたいと強く思うようになり、大学教授指導のもと、この本が生まれました。

現在のAI(人工知能)技術の進歩によって、モノクロ写真をまず自動色付けし、そこに戦争体験者からの聞き取りや資料をもとに手作業で細かな色付けをしていきます。それがどんなに膨大な時間と綿密な作業を必要としたかは、表紙になっている写真の完成に数か月を要したというコメントから容易に読み取れます。

モノクロ写真には、それが醸し出すノスタルジックな雰囲気という素晴らしさがありますが、そこに映っているのは「過去」というイメージを与え、自然と距離が生まれがちです。それをカラー化すると、まるで写真の中の人が今を生きているように感じられ、身近な人に思えてきます。原爆で今は跡形もない場所にも、今と変わらない普通のくらしがあったことがひしひしと伝わってきます。そしてその方々の多くが戦争で命を奪われたり、悲惨な体験をされたのだという事実に愕然とするのです。

今回書籍化された355枚の写真には、市井の人々の暮らしぶりから空母に突入後爆発する特攻機、出撃直前のまだ幼さの残る特攻隊員たちが子犬を抱いて笑顔で写っているものなど、開くページの一枚一枚に様々な感情が沸き上がり、心に響くものがあるはずです。新書サイズで見やすい本です。ぜひ一度手に取ってみてください。


10月

戦争は女の顔をしていない』


小梅けいと作画

                                      スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ原作

                                      速水螺旋人監修

     株式会社KADOKAWA


ノーベル文学賞を受賞した史上初のジャーナリスト、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチの同名作品の漫画化です。

第二次世界大戦のうち、ドイツとソビエト連邦(現在のロシア)との間で展開された独ソ戦の時代に戦場で生きた女性たちの姿が描かれています。

 『戦争は女の顔をしていない』というタイトルに魅かれ読み始めましたが、何より感じたのは、他国の戦争についてこんなにも知らない事が多いのだという事でした。

 戦時中の日本女性たちは、男性のいなくなった家庭や国を守るため国内でいろいろな苦労をして暮らしていました。やがて戦争が激しくなると日本本土も空襲にみまわれ、多くの命が奪われました。千人針を作り、たすきにもんぺの女性が皆様の思い浮かべる戦時中の日本女性の代表的な姿ではないでしょうか。

しかし、この作品の中に登場するソ連の女性たちは、男性と一緒に軍服姿で、銃を撃って前線で戦っています。女性も戦うことが当たり前と考えられている国の様子はとても衝撃でした。

そして戦争が終わっても、身体や心に受けた傷が、人間として幸せに生きることを困難にすることもあったのです。

読んだ後、漫画だけではなく原作も読んでみたいと思わせる作品です。


9月

『ある晴れた夏の朝』    


小手鞠るい偕成社

 

日本に落とされた原爆が是か非か、アメリカの高校生が肯定派・否定派に分かれ

聴衆に向けて公開討論会を行う、という形でこの本は構成されています。

彼らは自分の本音とは関係なくいずれかに振り分けられ、資料を集め、読み込んで当日を迎えます。

お互いの発表を聞きながら、新たに知った情報に揺れ動く気持ちも伝わってきます。

フィクションではありますが、戦争体験のない若者の学びや悩みを通して、原爆を「悪」ととらえるのか「必要悪」ととらえるのか、読み手にも深く考えさせられる作品になっています。

この本を読んで、被爆国に生きる私たちはあまりにも情報不足・理解不足・教育不足であると実感しました。

『戦争に勝ち負けはない。どちらも大きな敗け』という言葉には大きな意味があります。

また広島の慰霊碑に刻まれた『安らかに眠ってください過ちは繰り返しませぬから』この言葉の主語は我々人類すべてなのだと改めて胸に刻みたいと思います。

中学生向けの課題図書にもなった読みやすい本です。ぜひおすすめします。


8月

『アウシュヴィッツのタトゥー係』


ヘザー・モリス著・金原瑞人・笹山裕子・訳

双葉社


アウシュヴィッツを題材にした作品は『アンネの日記』や『夜と霧』など多数あります。

この作品は全世界で300万部を突破したベストセラーの翻訳で、アウシュヴィッツ収容所のタトゥー係になった一人の若者の物語です。生き残った人物から実際に聞き取った証言をもとにした作品ですが、正確な記録ではありませんという文章が著者注釈に書かれています。

主人公ラリは、偶然、被収容者に鑑識番号を刺青する仕事につくことになります。

収容後、ユダヤ人は名前ではなく番号で呼ばれるので、ラリの仕事は自分と同じユダヤ人から名前を奪うことだったのです。ラリは葛藤しながらも、「生き延びる」ためにタトゥー係を続けていく決意をします。

収容所で起こる様々な過酷な出来事を、ラリは知識と経験を駆使して切り抜けていきます。そして、自分が刺青をした一人の女性と恋に落ちるのです。

最終的に生き残ったラリが「運がよかった」ということも真実だと思いますが、どんな逆境になっても「絶対に生きる。生き延びることこそが抵抗。それがナチスに対する抗議。」という信念をいつも持ち続けたことがラリをアウシュヴィッツから生還させたのだと思います。

恐怖しかない世界でも失われなかった人間の強さに触れていただきたい作品です。


7月

『字のないはがき』


向田邦子原作・角田光代文・西加奈子絵

株式会社小学館


向田邦子さん、角田光代さん、西加奈子さんの3人の女性作家の名前が連なるだけでも気になる絵本です。

この絵本は、1979年(昭和54年)の向田邦子さんのエッセイ「眠る盃」の中の一つのお話を元に、角田光代さんが文章を書き、西加奈子さんが絵を描いた作品です。

直木賞作家の西加奈子さんは今作では絵を担当しています。

戦争中、向田邦子さんの「ちいさな妹」が疎開することになりました。お父さんは、まだ字の書けない娘に「元気な時は大きな丸を書くように」と言い聞かせ、宛名に自分の家の住所を書いたくさんのはがきを準備して疎開先へ持たせました。

やがて妹から届いた一枚目のはがきには、はがきいっぱいに大きな丸が書かれていました。しかし、次々、届くはがきの丸は段々と小さくなっていくのです。

このお話は向田邦子さんのご家族の実話です。

角田光代さんの文章だけでなく、西加奈子さんの絵はとても斬新で心にせまるものがあります。なんしろ、絵本の最後まで人の顔は一度も描かれていないのです。

鮮やかな色と大胆な構成の絵をみているだけで、向田邦子さん一家の家族への思いがよく伝わってきます。とりわけ、お父さんの小さな娘に対する心配と愛情の深さに、心が打たれる場面もあります。

子どもたちへの読み聞かせにもぴったりな絵本です。

どうぞ、手に取ってご覧ください。


6月

『れとろ探訪あの時の大阪を訪ねて』

       

毎日新聞社大阪本社写真部現代の写真・文

        毎日新聞社大阪事業本部企画部発行


大阪の各地で昭和期に撮影された写真の現地取材をし、当時と同じ場所で撮影した現代の写真を紹介する1冊です。現代と過去の写真を見比べるだけでも興味深いのですが、添えられた文章には、そこで暮らしていた人々やその時代を思う気持ちがあふれていて、初めてみる写真の中にでも「懐かしさ」がこみあげてきます。

そして、この本は、当資料館にとっても大切な思い出のあるものでもあります。

2012年(平成24年)6月、毎日新聞社の記者の方が来館され、『昭和史』(毎日新聞社・編)に掲載されていた「夫の復員を心から迎える家族」という写真が吹田市の山田で撮影されたものであることを話され、その写真に写っている人や場所を詳しく知りたいと言われました。

その後、山一地区公民館の館長さんにご協力いただき、地区の皆様のご協力のもと、家の後ろの松の木を手掛かりに写真の家が見つかり、記者の方は当時のことを知る親族と対面することができました。70年以上前の出来事が少しずつ明らかになっていくという体験を、目の当たりにしたことは、とても奇跡的で記憶に残るものでした。

この時の話が、この本の巻末に「番外編復員兵」として掲載されています。

どうぞ、本を手に取り、手掛かりになった松の木のある家を見て、この復員兵の方のお話を読んでいただきたいと思います。

過去と現在はつながっているということを改めて感じられる1冊です。


3月

へいわとせんそう


谷川俊太郎・文Noritake(のりたけ)・絵ブロンズ新社


詩人谷川俊太郎氏とイラストレーターNoritake氏による絵本です。

表紙をめくると、簡潔な言葉と絵で、「へいわのボク」と「せんそうのボク」が、左右のページに並んでいます。同じ男の子が、笑顔で立っているのが左のページ、悲しそうに膝を抱えて座っているのが右のページです。

親子を描いたページでは、「へいわのハハ」は男の子を膝にのせて本を読み、「せんそうのハハ」は何かから守るように、厳しい表情で男の子をぎゅっと抱きかかえています。

子どもは、この絵本を読んで、「同じ人なのにどうしてこんなに違うの?」と尋ねるかもしれません。そして大人は、ページをめくるにつれ、ドキッとして声が出なくなるのではないでしょうか。

シンプルな文と絵で描かれた平和と戦争の対比は、年齢を問わず読んだ方の心にいろいろな形で伝わるのではないかと思います。


2月

特殊潜航艇海龍【改訂版】』

                                                  

   白石良著元就出版社 発行


著者白石氏は、「海龍」の元艇長池田明義氏のご令息が弟さんと同学年の縁で、池田氏が海龍乗りであったことを知りますが、資料がほとんどなく少しでも記録を残しておきたいと本書を執筆されました。平成23年に初版が発行され、令和元年9月に改訂版が出版されました。

特殊潜航艇「海龍」は、大東亜戦争末期、本土防衛のための特攻兵器として造られましたが、具体的にはあまり知られていません。何故なら「海龍」が最後の決戦用兵器として、軍機のヴェールに覆われていたこと、結果として出撃することがなく、記録としてまとまったものがなかったことが理由に上げられます。しかし、そこには「国のために」「同胞のために」「家族のために」命をかけた、当時の「昭和の白虎隊」ともいうべき多くの青少年たちがいました。

本書の第一部、海龍始末記では、池田氏を含む十代の若者の学徒出陣、地獄のように厳しかったと言われる武山の予備学生時代や術科学校時代から追っていきます。その後、「横須賀嵐部隊」に配属され訓練を受けますが、出撃は叶わず終戦を迎え、「いつ死ぬかわからない」緊張から解放されるのです。その思いは計り知れませんが、戦後、搭乗員の中から日本の復興を中心となって担う人物が出てきており、海龍は出撃しなくてよかったと著者は書いています。

第二部は海龍資料編で、水上・水中特攻兵器比較図、海龍展開計画、「嵐部隊入隊ニアタリテノ所感」など、克明に調査された資料が掲載され、池田氏が感嘆するほどの著者の熱意が感じられるものとなっています。本土決戦のための切り札として造られた、幻の水中特攻兵器の真相がこの本にあります。


1月

『医者井戸を掘るアフガン旱魃との闘い』

中村哲・著(株)石風社


昨年12月4日、アフガニスタンで銃撃され亡くなった中村哲医師の著書です。

アフガニスタンのニュースは「タリバン」、「バーミヤンの仏教遺跡破壊」などがありますが、「旱魃」については、あまり注目されてこなかったのではないでしょうか。

中村医師は、「群れをなすほど多くの患者」の診療をしていたある日、病気の大流行の原因が飲料水の欠乏であることに気づきます。そこまでは、医者として当然のことかもしれません。

ところが、その後、中村医師は水を確保するために、井戸を掘ることを決め、実際に行動に移します。もちろん、井戸など掘ったこともない素人集団の無謀な挑戦なので、様々な失敗を繰り返し、苦悩します。しかし、確実に井戸を増やし、アフガニスタンの大地に水と緑を取り戻していくのです。

この『医者井戸を掘る』は、その困難な闘いの日々が克明に描かれており、中村医師の「ともかく始める」決断力と行動力、そして弱者に対する優しさが、その記録の中からあふれでています。

先日、中村医師を取り上げたドキュメンタリー番組が、追悼番組として再放送されました。その中で、アフガニスタンの男性は「水があって、農業ができて、家族と一緒にいられたら戦争なんかに行かない」と語っていたこと、中村医師は、ご自身の活動を「平和のためではなく医療の延長だ」と語られていたことがとても印象的でした。

本書の中で、中村医師は久しぶりに帰国した日本のことを、「飢えや渇きもなく、十分に食えて、家族が共に居れる。それだけでも幸せだと思えないのか。」と述べています。

中村医師のご冥福を心からお祈りするとともに、身近にある幸せや平和に気づき、考えていただきたいと思い、この本を紹介しました。


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