令和3年8月号市報すいた市長コラム「合格発表」

ページ番号1013053 更新日 2022年9月21日

「合格を確認したら、表情は変えずに学校まで帰ってこい。そして笑顔で担任に報告し、自宅に帰って初めて飛び上がって万歳せよ」
いつになく真顔で語る高校3年のクラス担任の言葉に、ざわついていたホームルームが静まりました。先生は続けます。「君たちは一人で生きているのではない。これまでも、これからも。これは生徒ではなく、近く社会に出る者に対しての忠告だ」と。
私たちの多くは、成功や勝利など、うれしいことがあると素直に喜びを表します。それを見ているこちら側にまでうれしさが伝わってくるほどに。しかし、先生は「笑顔や歓声が、思いも寄らないところで矢となり槍となって隣人の心に突き刺さる場合があることを考えよ」と忠告するのです。
自身の喜びを爆発させる場合にもTPOがあり、そこにその人の人柄や人格が表れる、という教訓は、今も私の心に深く刻まれています。その一方で、抑えようのない感情には素直になった方がいいとも思うのです。
あれから数十年、今思うと、あの先生は「たかが大学に合格したくらいで我を忘れるな。君たちはスタートの号砲で万歳するのか？」と、高校生だった私たちの将来に向けて、行間で語りかけていたのかもしれません。