令和2年1月号市報すいた 市長コラム「『本当の自分』なんて探さなくていい」

「個性を大事に」や「自分探し」というフレーズに私は小さな違和感を覚えます。特に「自分」が成熟していない若者が使う場合には。タイトルは、彼らに対する解剖学者・養老孟司（ようろうたけし）さんの言葉です。

人は個性や固有の価値観を持っていますが、それらは、その後の人生経験や、例えば一冊の本との出会いで往々にして変化するものです。その変化を成長と呼ぶのでしょう。この言葉は、存在しない「本当の自分」をわざわざ探そうとせずとも、今ここに居るのが「自分」なのだよ、というメッセージですね。

今年も成人祭で多くの新成人を迎えます。この日を機に「なりたい目標」だけではなく「こう生きたい」というスタイルを見定めてほしいと思います。

20歳の私は動物行動学者になりたいという目標を持っていました。今はこうして違う道を歩む私ですが、芯にある「先入観にとらわれず奥にある真実を見抜く」という姿勢は、その後に「こう生きたい」という私のスタイルとなりました。

自分の理想像を持っても良いが、生きているからこそ変化する自身を楽しみなさい。養老さんのメッセージに、まだ見ぬ「新たな自分」を楽しみにしている今日の私がいます。

さあ、新年の幕開けです。全ての人にとって良い年になりますように。

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