吹田市人権施策基本方針 4 取り組むべき主要な課題

ページ番号1019826 更新日 2022年9月21日

平成18年(2006年)2月

4 取り組むべき主要な課題

(1) 男女共同参画

21世紀を迎えた現在においても固定的な性別役割分担の考え方は、まだ社会の中に根強く残っており、そのことが子育て中の女性の労働力率の低下などさまざまな不平等をもたらしています。また、女性に対する人権侵害であるドメスティック・バイオレンスやセクシュアル・ハラスメント(※注:4)などの実態も明らかになっています。

男女が共に性別にかかわりなく、その個性と能力をあらゆる分野で発揮できる男女共同参画社会の実現が強く求められています。そのためには、男女共同参画に向けての意識改革やさまざまな分野における環境づくりを進めるとともに、政策・方針決定の場に女性の参画を進めることが必要です。

わが国では、平成11年(1999年)に「男女共同参画社会基本法」が施行され、平成13年(2001年)には、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」が施行されました。

本市では、平成14年(2002年)に、男女共同参画社会の実現に向けて、行政と市民、事業者が協働するための基盤となる「吹田市男女共同参画推進条例」を制定しました。そして条例の実現を図るため、平成15年(2003年)に「すいた男女共同参画プラン」を策定しました。

「男女共同参画プラン」では、「男女が互いに人権を尊重しあい、自立し、その個性と能力を発揮し、平等に生きるまち」、「家庭・職場・地域・学校など、あらゆる分野に男女が対等に参画し、相互の信頼に基づいたふれあいのあるまち」、「男女が安心して平和で豊かに暮らせる魅力あるまち」をめざすとともに、計画的に事業を実施するために目標値を設定することや、重点的に取り組む必要がある施策や事業、市民の取組みなどを掲げています。また、男女共同参画施策への苦情や性別による権利侵害の相談の申し出ができる苦情等処理委員を設置しています。

今後、条例やプランに基づき男女が家庭、職場、地域、学校などあらゆる分野に対等な立場で参画できる男女共同参画社会の実現に向けて、行政、市民及び事業者が一体となり計画的に施策を推進していきます。

(2) 子ども

わが国では、平成6年(1994年)に「子どもの権利条約」が批准され、平成9年(1997年)には、子どもや家庭を取り巻く環境の変化等を踏まえ、保育施策の見直しや子どもの自立支援施策の充実などを内容とした「児童福祉法」の改正が行われました。また、平成12年(2000年)には「児童虐待の防止等に関する法律」が制定されました。

本市においては、保育園を「地域子育て支援センター」と位置づけ、地域で子育てを支援し合う基盤の形成に努めるなど子育て支援に取組んできました。平成13年(2001年)10月には関係機関で構成された「吹田市児童虐待防止ネットワーク会議」を設置し、保健、医療、福祉、教育、警察等の関係機関との連携・支援体制の充実に努め、虐待防止に向けた意識啓発等に取組んできました。また、平成16年(2004年)10月の「児童福祉法」の改正により、平成17年(2005年)4月からは児童福祉に関する実情の把握、情報の提供や調査、指導などの児童相談業務が市町村の業務として明確に位置付けされました。青少年の健全育成については、家庭、学校、地域、関係団体等の相互の連携を図り活動を展開するなど総合的な対応が必要であることから、平成16年(2004年)3月に「吹田市青少年育成計画」を策定しました。また、「地域教育コミュニティ事業」として各中学校区に「地域教育協議会」を設置し、地域社会全体で子どもの健全育成の取組みを行うとともに「不登校児童・生徒支援事業」の取組みなども行ってきました。

近年大量の物や情報が氾らんする一方で、少子化や核家族化、地域社会の人間関係の稀薄化、学歴偏重の社会風潮などにより、子どもを取り巻く家庭や社会環境の変化は著しいものがあります。

このような状況の中で、いじめや児童虐待、青少年犯罪の低年齢化、凶悪化、また、いわゆる援助交際や児童ポルノなどの性の商品化など、子どもの人権をめぐる問題が深刻化しています。

子どもは未来の希望であり、将来に向けて社会を築いていく役割を持っています。子どもが自分の考えで判断し、行動する力を持っていることを理解するとともに、子ども達が自由に自分の意見を表明し、その意見をまちづくりに反映することができるシステムの構築を検討します。

人権教育・啓発は生涯にわたるものですが、子どもたちにとっては、家庭や学校、地域の教育力が果たす役割は極めて大きなものがあります。その重要性をしっかりと認識し、一人一人の子どもが、多様な個性、価値観を認め合い、他者を思いやる豊かな人間性、社会性を身に付けることができるよう教育活動のすべてに人権の視点に立って取組んでいきます。

今後、こうした取組みの一層の充実を図る中で、家庭、学校、地域社会など社会全体が協力して子育てを支援していく体制を整備します。

子どもが人権侵害を受けたときに、相談及び救済の申し立てを安心して行うことができ、必要な情報提供を受けられる子どもの人権救済の体制づくりを進めます。また、子どもが一人の人間として尊重・保護され、生存、発達や自由が保障されるためにも、子どもの視点に立って、子どもが安心、安全で健やかに育つまちづくりを進めます。

(3) 高齢者

高齢者が、いつまでも健康で生き生きと暮らせるよう、就労はもとより、趣味、スポーツ・文化・ボランティア・福祉活動など地域社会において連携を図りながら社会参加を促進することが大切です。

また、急速な高齢化が進む中で、高齢者の権利や介護を巡って生じているさまざまな問題への対策も急がなければなりません。介護保険制度においては、措置から契約への制度改正により、利用者とサービス提供者との契約の際に判断能力が不十分なため対等な立場に立てないという問題や、また、介護を担う家庭においては、家族の心身の負担が重くなり、人間関係が損なわれ虐待や介護放棄にいたってしまうなどの問題があります。老人福祉施設や病院などにおいても、入所者のプライバシーの侵害や身体拘束などの問題が指摘されているほか、ひとり暮らしの高齢者や認知症高齢者を欺き、財産権を侵害する事例も見受けられます。

そのため高齢者自らが、社会の構成員として積極的に役割を担うことができるよう、学習機会の充実や意識啓発を図るとともに、幅広い世代がふれあい、交流を深める「世代間交流」を進め、多年にわたって社会に寄与してきた高齢者が敬愛され、生きがいをもって生活できるよう、市民の認識を高めるための意識啓発を進めます。

現在、高齢者が権利侵害を受けた場合にそれをどのように救済するのか、また、高齢者の声や訴えを反映させる社会システムを行政や保健・医療・福祉現場にどのようにつくるのか、これらも問われています。「成年後見審判申立支援事業」や吹田市社会福祉協議会による「地域福祉権利擁護事業」などを実施していますが、人権の視点から一層充実したシステムのありかたを追求する必要があります。また、介護者を含め、高齢者がいる家族への支援を一層充実します。

今後、高齢者が豊かに生きる権利や個人としての尊厳が重んじられる支援対策を総合的に推進し、介護サ-ビスを含め社会福祉サ-ビスの質が高齢者の人権の保障にふさわしい水準になるよう取組んでまいります。また、関係事業者にも働きかけます。

(4) 障害者

障害者が地域社会の中で暮らしていくうえでは、さまざまな障壁(バリアー)があります。歩道の段差や階段、駅舎エレベーターの不備などの「物理的な障壁」、資格制限等による「制度的な障壁」、さらには差別や偏見等の「心理的な障壁」、点字図書や字幕付きテレビ放送が不足していることなどの「文化・情報面の障壁」などです。また、これらの障壁に加え、障害者に対する企業や施設内等での虐待や暴行、施設コンフリクト(※注:5)の問題、さらには財産侵害などの人権問題が生じています。これらは障害のない人々を中心とした社会の仕組みの中で、障害がある人々の人権保障が取り残されてきたためです。

わが国では、平成14年(2002年)12月に新たな「障害者基本計画」が策定されソフト、ハード両面にわたる社会のバリアフリー化の推進を基本的な方針とされ、障害の有無にかかわらず誰もが人格と個性を尊重して相互に支え合う共生社会の実現をめざすとされています。

また、平成17年(2005年)10月に、身体及び知的障害者(児)や精神障害者を対象とした障害者の福祉サービス、公的負担医療費等、障害種別にかかわりなく共通の制度の下で一元的にサービスを提供するための障害者自立支援法が成立しました。この制度の円滑な運用を図るとともに、障害者がサービスを利用するうえで不利な状況に置かれることがないよう、障害者の権利擁護の取組みを進めてまいります。

本市においては、平成8年(1996年)に策定した障害者計画の「ノーマライゼーション」(※注:6)の理念を継承するとともに、社会全体でのバリアフリー化の推進を図るため平成18年度(2006年度)を初年度とする「第2期障害者計画」の策定に取組んでいきます。

今後とも、障害のある人と障害のない人が、同じ権利を持つ一人の人間であることを認識し、障害者が容易に自己実現を図ることのできる「共に生きる社会」を構築するため、さまざまな機会を通じて障害者に対する差別や偏見の解消に努めます。

(5) 同和問題

昭和40年(1965年)に国の同和対策審議会が、「同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題」と位置づけ、その早急な解決が「国の責務であり、同時に国民的課題である」と答申され、昭和44年(1969年)に「同和対策事業特別措置法」が制定されました。

その後、昭和62年(1987年)には、特別対策事業の一般対策事業への円滑な移行のための最終法として、「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(以下「地対財特法」という。)」が制定されましたが、平成14年(2002年)3月末限りで「地対財特法」は失効し、これまで、対象地区を限って行なわれてきた特別対策事業は廃止されました。

本市では、同和問題の解決に向けた取組みを市の重要課題として位置付け、同和地区における生活環境等の基盤整備を進めるとともに、人権意識の高揚を図るための人権教育・啓発にも努めてきました。この結果、生活環境等の基盤整備が大幅に進み、地区の状況は改善され、心理的な差別についても解消の方向に進んできましたが、差別事象が起こらないよう、差別意識の解消に向けた取組みが必要であり、一人一人が同和問題について一層理解を深めていくことが必要です。

今後、差別のない社会の実現に向け、これまでの取組みの中で積み上げてきた成果を踏まえて、すべての人の基本的人権を尊重していくための人権教育・啓発を推進し、一般施策の有効活用を図るとともに、地域の施設を活用して、より多くの市民に呼び掛け交流を進めていきます。また、相談事業や講座等を実施することにより、人権侵害を受けた人、あるいはさまざまな課題を抱えた人々が、自立と自己実現を達成することができるよう努めます。

(6) 外国人

本市には、在日韓国・朝鮮籍などの永住者やアジア諸国をはじめ、多くの外国人が生活しています。外国人は、言葉や習慣、文化の違いを越えて暮らしており、このような中で、国を越え、助け合い、共に生きることの大切さを認識する必要があります。しかし、異なる言語や習慣、文化等への理解不足などから、就労や住宅、教育、結婚等の社会生活において外国人が差別的な待遇を受けるなどの人権問題が生じています。

私たちは、異なる文化や生活習慣、価値観に対する相互理解を深め合い、共に生きる環境づくりを進め、多文化共生の意識を高めていかなければなりません。

そのため、国際理解のための教育やさまざまな交流事業、外国人のための日本語講座等の事業、外国籍市民の声を市政に反映させるための仕組みづくりなどを推進します。

(7) その他の人権課題

近年、医療需要の多様化・高度化、医療内容の専門化・複雑化にともない、医療従事者は、患者の立場にたった医療情報の提供や適切な説明を行い、患者の理解を得るよう努めることとなりました。また、臓器移植の推進が図られている中で、臓器移植の際には、透明性確保の要請と、臓器提供者や家族などのプライバシー保護の要請という二つの面の調和などが課題となっています。

HIV(※注:7)感染者やハンセン病(※注:8)患者等については、知識や理解の不足から差別や偏見を生んできました。そのため、正しい知識を広く普及するなど、患者や家族に対する誤った認識や偏見の解消を図るための啓発の充実に努めます。

また、野宿生活者、性的マイノリティ(※注:9)とされる人々、刑を終えて出所した人々、犯罪被害者やその家族あるいは被疑者、その他さまざまな人権にかかわる問題があります。

最近ではインターネット等を利用した人権侵害事例やプライバシーの侵害、事業者等の個人情報の漏洩などについても問題となっているほか、遺伝子工学(※注:10)の急激な進展などに伴う問題が生じることが懸念されています。

その他にも、社会が複雑化し急速な変革が押し寄せる中で、社会の進歩につながる事柄であっても、人権の視点からとらえ直すとさまざまな問題を含んでいる場合もあります。

今後、国や大阪府の動向も注視しながら、これらの人権課題の解決に向けて対応していきます。

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【男女共同参画】 06-6384-1461
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