人権尊重の理念の普及を図るなど人権に関する施策を総合的に進めるために(答申) 4.取組むべき主要課題

ページ番号1006442  更新日 2022年8月30日

平成14年(2002年)11月22日
吹田市人権施策審議会

4. 取組むべき主要課題

吹田市においては、人権課題に対するさまざまな取組みを行ってきたが、関係する団体からの意見陳述でも明らかなように、今日もなお、性別、社会的身分や障害があることなどにより人権が侵害されている現実があり、また、情報化の進展などの社会状況の変化等により、人権にかかわる新たな課題も生じてきている。
このような中で、取組むべき主要な課題としては以下のようなものがある。

(1) 女性

国連は、従来から性に基づく差別の禁止を施策の重要な目標の一つに掲げ、男女平等実現のための努力を続けていたが、昭和50年(1975年)を「国際婦人年」と定め、これに続く10年間を「国連女性の10年」と位置付けた。その後、昭和54年(1979年)には「女子差別撤廃条約」が、平成5年(1993年)には、女性に対する暴力の撤廃に関する宣言が採択されたほか、世界女性会議の定期的な開催など、女性の地位向上に向けたさまざまな取組みが国際的な規模で行われてきた。
わが国では、このような国際的な動きと連動して、昭和60年(1985年)に「女子差別撤廃条約」が批准され、平成11年(1999年)には、男女の人権の尊重、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の基本となる事項を定めた「男女共同参画社会基本法」が施行され、それに続き平成13年(2001年)に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」も制定され、施行された。
吹田市では、平成5年(1993年)に「すいた女性プラン」を策定し男女共同参画社会の実現をめざして施策を推進してきた。しかし、計画の基本目標とした「個人の尊厳と男女平等を基礎として、固定的性別役割分担とその意識を解消し、男女がもてる能力を発揮し、社会のあらゆる分野に参画できる男女共同参画型社会の実現」に照らしてみると、今日まだ多くの課題が残っている。
平成12年(2000年)に行った「男女平等に関する市民意識・実態調査」では、多くの人が社会全体において男性優遇であると感じており、日常生活での性別役割分担も根強く残っている。女性に対する人権侵害であるドメスティック・バイオレンス(DV)やセクシュアル・ハラスメントの実態が明らかになっている。
また、男女共同参画社会を実現していく上で、行政に対し「保育・介護サービスの充実」や「男女平等をめざした制度や施策の制定や見直し」などが求められている。
男女平等を基礎として、男女が共に、固定的性別役割分担意識にとらわれることなく、家事・育児・介護などの家庭生活を共同で営み、職業生活、地域生活等あらゆる場に参画し、生き生きと活躍できる社会の実現が、差し迫った課題となっている。これらの課題に対する取組みのためには、本年11月に施行した「吹田市男女共同参画推進条例」に基づき、男女共同参画に対する理解と関心を市民に広め、教育と啓発に努めるとともに、計画的に、行政、市民、事業者が協働して男女共同参画社会の実現に向けて取組んでいくことが必要である。

(2) 子ども

国連は、昭和34年(1959年)の総会において、子どもが必要な権利や自由を享有することができるよう「児童の権利に関する宣言」を採択した。この宣言の20周年にあたる昭和54年(1979年)を「国際児童年」とし、宣言の履行を要請したほか、平成元年(1989年)の総会において、「児童の権利に関する条約」が採択された。この条約では、子どもの尊厳が守られるために欠かすことができない条件として、「安心して生活できる環境条件が提供されること」、「心身を害する危険から保護されること」、「自分にかかわることを知らない間に決められて、押しつけられたりすることなく、決定に参加し、自分の意志が尊重されること」を掲げている。
わが国では、昭和22年(1947年)に子どもの健全育成や保護を目的とした「児童福祉法」が制定され、すべての子どもの幸福を図ることを目的に、昭和26年(1951年)に「児童憲章」が制定された。また、平成6年(1994年)には「児童の権利に関する条約」を批准するとともに、平成9年(1997年)には子どもや家庭を取り巻く環境の変化等を踏まえ、保育施策の見直しや子どもの自立支援施策の充実などを内容とした「児童福祉法」の改正が行われた。さらに、平成12年(2000年)には子どもに対する虐待の禁止や虐待を受けた子どもの保護を内容とする「児童虐待の防止等に関する法律」の制定などの法整備と諸施策の推進が図られている。しかしながら、近年大量の物や情報が氾濫する一方で、少子化や核家族化、地域社会の人間関係の稀薄化、学歴偏重の社会風潮などにより、子どもを取り巻く家庭や社会環境の変化は著しいものがある。このような状況の中で、いじめや児童虐待、青少年犯罪の低年齢化、凶悪化、また、いわゆる援助交際や児童ポルノなどの性の商品化など、子どもの人権をめぐる問題が深刻化している。
子どもは、未来の希望であり、将来に向けて社会を築いていく役割を持っている。子どもは、自分の考えで判断し、責任のある意見表明をしたり、行動する力を持っていることを理解し、子どもの意見をまちづくりに反映することができるシステムなどを検討する必要がある。
吹田市では、保育園を「地域子育て支援センター」と位置づけ、地域で子育てを支援し合う基盤の形成に努めるなど子育て支援に取組んでいる。また、昨今、社会問題となっている児童虐待問題については、平成13年(2001年)10月に関係機関で構成された「吹田市児童虐待防止ネットワーク会議」を設置し、保健、医療、福祉、教育、警察等の関係機関との連携・支援体制の充実に努め、その防止に向けた意識啓発等に取組んでいる。
また、青少年の健全育成については、家庭、学校、地域、関係団体等の相互の連携を図り活動を展開するなど総合的な対応が必要であることから、現在、「(仮称)吹田市青少年育成計画」を策定中である。
教育委員会では、「地域教育コミュニティ事業」として各中学校区に「地域教育協議会」を設置し、地域社会全体で子どもの健全育成の取組みを行い、また、「不登校児童・生徒支援事業」の取組みなども行っている。人権に関する教育・啓発は生涯にわたるものであるが、子どもたちにとっては、学校教育が果たす役割は極めて大きい。その重要性をしっかりと認識し、一人ひとりの子どもが、自己肯定感を持ち、多様な個性、価値観を認め合い、豊かな人間性、社会性を身に付けることができるよう教育活動のすべてに人権の視点を据えて取組むことが大切である。
今後、こうした取組みの一層の充実を図る中で、家庭、学校、地域社会など社会全体が協力して子育てを支援していく体制を整備し、子どもが一人の人間として尊重され、尊厳、生存、保護、発達や自由が保障されるためにも、人権侵害を受けたときに、子どもが相談及び救済の申し立てを安心して行うことができたり、情報提供を受けられる子どもの人権救済の体制づくりに努める必要がある。

(3) 高齢者

人口の高齢化に関する国際的な取組みとしては、昭和57年(1982年)に国連主催の世界会議において「高齢化に関する国際行動計画」が、また、平成3年(1991年)の国連総会において21世紀を展望し、高齢者の尊厳と人権保障に関する原則をうたった「高齢者のための国連原則」がそれぞれ採択された。平成4年(1992年)の国連総会では、これらの国際行動計画や国連原則をより一層広めることを促すとともに、各国において高齢化社会の到来に備えた各種の取組みが行われることを期待して、平成11年(1999年)を「国際高齢者年」とする決議が採択された。
わが国では、今世紀の早い段階で4人に1人が65歳以上という本格的な高齢社会が到来すると予測されている。これは世界に類を見ない急速な高齢化である。このため平成7年(1995年)に「高齢社会対策基本法」が施行され、各種の対策が講じられてきた。さらに平成13年(2001年)には、より一層の対策を推進するため「高齢社会対策大綱」が決定された。
吹田市では、平成2年(1990年)に「高齢化社会長期指針」を策定して以来、総合的な施策の推進を計るとともに、平成6年(1994年)には高齢者の保健福祉に係る「吹田市老人保健福祉計画」を、また、平成12年(2000年)には介護保険制度の実施にともない「吹田市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」を策定してきた。平成13年度(2001年度)には「成年後見審判申立支援事業」などを進めているほか、さらなる施策の推進をめざして「第2期吹田市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」の策定を進めるとともに、高齢者のための住宅政策や高齢者の通行を妨げる要因を除くため、駅舎や移動経路のバリアフリー化などにも取組んでいる。
高齢者が、いつまでも健康で生き生きと暮らせるよう、就労はもとより、趣味、スポーツ活動、文化活動、ボランティア活動、福祉活動など地域社会において連携を図りながら社会参加を促進することが大切である。高齢者自らが、社会の構成員として積極的に役割を担うことができるよう、学習機会の充実や意識啓発を図るとともに、幅広い世代がふれあい、交流を深める「世代間交流」を進め、多年にわたって社会に寄与してきた高齢者が敬愛され、生きがいをもって生活できるよう、市民の認識を高めるための意識啓発が必要である。
また、急速な高齢化が進む中で、高齢者の権利や介護を巡って生じているさまざまな問題への対策も急がなければならない。介護保険制度においては、措置から契約への制度改正により、利用者とサービス提供者との契約の際、判断力が不十分なため対等な立場に立てないという問題や、また、介護を担う家庭においては、家族の心身の負担が重くなり、人間関係が損なわれ虐待や介護放棄にいたってしまうなどの問題がある。老人福祉施設や病院などにおいても、入所者のプライバシーの侵害や身体拘束などの問題が指摘されているほか、一人暮らしの高齢者や痴呆性高齢者を欺き、財産権を侵害する事例も見受けられる。
現在、高齢者が権利侵害を受けた場合にそれをどのように救済するのか、また、高齢者の声や訴えを反映させる社会システムを行政や保健・医療・福祉現場にどのようにつくるのか、これらも問われている。「成年後見審判申立支援事業」や社会福祉協議会による「地域福祉権利擁護事業」などがスタートしているが、人権の視点から一層充実したシステムのありかたを追求する必要がある。また、介護者を含め、高齢者を持つ家族への支援を人権の視点から一層充実する必要がある。
今後、高齢者が豊かに生きる権利や個人としての尊厳が重んじられる支援対策を総合的に推進し、介護サービスを含め社会福祉サービスの質が高齢者の人権の保障にふさわしい水準になるよう、行政、関係事業者が取組んでいくことが必要である。

(4) 障害者

国連は、障害者の完全参加と平等をテーマに昭和56年(1981年)を「国際障害者年」とし、翌年には総会において、1983年から1992年までの10年間を「障害者のための国連10年」と定め、障害者の人権確立に向けて世界的な行動を行うこととした。
わが国では、平成5年(1993年)に障害者の自立と社会参加の促進を図ることを目的に「心身障害者対策基本法」を「障害者基本法」に改正し、あわせて、1993年から10年間を期間とする「障害者対策に関する新長期計画」を策定し、ライフステージの全段階において全人間的復権をめざすリハビリテーションの理念と、障害のある人とない人が共に生活し活動するノーマライゼーションの理念のもとに、完全参加と平等という目標に向けて施策を推進するとの方針を示した。平成7年(1995年)には、新長期計画の重点施策実施計画である「障害者プラン(ノーマライゼーション7カ年戦略)」を策定し、関係省庁が横断的、総合的に施策を実施している。また、平成15年度(2003年度)からは福祉サービスの利用が、これまでの措置制度から利用者の自己決定を尊重した契約による支援費制度へと大きく変わる。
障害者が地域社会の中で暮らしていくうえでは、さまざまな障壁(バリアー)がある。すなわち道路の段差や階段、駅舎エレベーターの不備などの「物理的な障壁」、資格制限等による「制度的な障壁」、さらには差別や偏見等の「心理的な障壁」、点字図書や字幕付きテレビ放送が不足していることなどの「文化・情報面の障壁」などである。また、これらの障壁に加え、障害者に対する企業や施設内等での虐待や暴行、障害者施設建設に対する地域住民の反対という施設コンフリクトの問題、さらには財産侵害などの人権問題が生じている。これらは障害のない人びとを中心とした社会の仕組みの中で、障害を有する人びとの人権保障が取り残されてきたためである。
吹田市では、平成8年度(1996年度)に目標を平成17年度(2005年度)とする「吹田市障害者計画」を策定した。その中で、「障害者の主体性、自立性の確立」、「全ての人が安心して暮らせる平等な社会づくり」、「ノーマライゼーションの実現をめざす社会づくり」という3つの基本的な考え方を示している。現在、この「ノーマライゼーション」等の理念を踏まえ、障壁を取り除くための取組みが、市・市民・当事者との協働で進められている。こうしたバリアーをなくすこと(バリアフリー)は、障害者だけでなく、子どもや高齢者にも生活しやすい環境を実現することにもつながっている。障害のある人と障害のない人が、同じ権利を持つ一人の人間であることを認識し、障害者が容易に自己実現を図ることのできる「共に生きる社会」を構築するため、障害者の権利を擁護するとともに、さまざまな機会を通じて障害者に対する差別や偏見の解消に努めなければならない。
さらに、市は、障害者の人権を保障するため、保健、福祉、教育など総合的な施策を推進し、障害者の社会参加のために、雇用、労働、交通、文化、スポーツなどの市民生活を確保する活動を支援・振興する必要がある。また、支援費制度の導入により、措置から契約へと転換されるが、円滑なサービスの利用が進むよう、あるいは、契約システムにより不利な状況に置かれる障害者がないよう、障害者の権利擁護の取組みを推進する必要がある。

(5) 同和問題

国の同和対策審議会が、昭和40年(1965年)に出した答申では、「同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる問題」と位置付け、その早急な解決が「国の責務であり、同時に国民的課題である」と述べられ、今日までの同和対策の基礎になってきた。この答申を踏まえ、昭和44年(1969年)に10年間の時限立法として同和対策事業特別措置法が制定され、その後、3年間の延長も含め同和対策事業が総合的に推進された。昭和57年(1982年)には5年間の時限立法として地域改善対策特別措置法が制定された。昭和62年(1987年)には「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(以下「地対財特法」という。)が、特別対策事業の一般対策事業への円滑な移行のための最終法として、5年間の時限立法で制定された。平成4年(1992年)には一部事業について延長され、その後、平成8年(1996年)5月の地域改善対策協議会の意見具申を受けて、「延長された特別措置法の最終年を迎え、これまでの特別対策はおおむねその目的を達成できたが、一部の事業については、なおかつ継続を必要とする。」との判断から、5年間に限り経過的に法的措置が実施されてきた。
吹田市では、同和問題の解決に向けた取組みを市の重要課題として位置付け、同和地区における生活環境等の基盤整備を進めるとともに、人権意識の高揚を図るための教育及び啓発にも努めてきた。この結果、同和地区における生活環境等の基盤整備についてはおおむね完了し、地区の状況は改善され、心理的な差別についても解消の方向に進んでいるが、いまだに差別事象も起こっており、一日も早い、差別意識の解消が望まれるところである。
一方、平成14年(2002年)3月末限りで、「地対財特法」が失効し、これまで対象地区を限って行ってきた特別対策事業を見直し、平成14年度(2002年度)からは基本的に廃止または一般施策に移行している。
今後は、これまでの取組みの中で積み上げてきた成果を踏まえ、同和問題の解決のため、その取組みを人権問題の本質からとらえ、すべての人の基本的人権を尊重していくための人権教育及び人権啓発として発展的に再構築し、市民においては、一人ひとりが同和問題について一層理解を深め、自らの意識を見つめ直し、自らを啓発していくことが大切である。そのためには、「交流活動館」や「青少年クリエイティブセンター」、「高齢者いこいの家」等の施設を活用し、より多くの市民に呼び掛け、地域交流を進めることが大切であり、また、人権侵害を受けた人、あるいはさまざまな課題を抱えた人びとが、自立と自己実現を達成することができるための相談事業や魅力ある講座等の展開を図り、差別のない社会の実現に努める必要がある。

(6) 外国人

本格的な国際化時代を迎え、国際的な人的・物的な交流の増大と情報通信の発達により、外国人と隣り合って暮らす社会が現実となっている。吹田市においてもアジア諸国を中心とした多くの外国人が生活している。平成14年(2002年)3月末現在で外国人登録者数は、4,718人となっており、国別の内訳としては、韓国・朝鮮籍が2,639人で最も多く、次に中国籍が1,153人、次いでアメリカ籍が109人、その他に86カ国767人となっている。外国人は、言葉や習慣、文化の違いを越え懸命に暮らしており、多文化共生の市民社会が形成されつつある。
このような中で、国を越え、助け合い、共に生きることの大切さは市民の誰もが認識しているところである。しかし、戦前・戦後の歴史的経過からわが国に生活の本拠を有する在日韓国・朝鮮籍等の永住者については、日本人市民との文化、スポーツ交流などを通して相互理解が深まりつつあるが、差別意識は依然として根強く残っている。
また、異なる言語や習慣、文化等への理解不足などから、外国人が、就労や住宅、教育、結婚等の社会生活において、差別的な待遇を受けるなどの人権問題が生じている。
外国人に対する理解やその人権の尊重に関する意識を高揚するためには、異なる文化や生活習慣、価値観に対する相互理解を深め合い、共に生きる環境づくりを進め、多文化共生の意識を高揚することが大切である。
吹田市では、外国人市民が、住みやすく活動しやすい環境整備に努め、外国人を含むすべての市民が、あらゆる差別を根絶し、お互いの歴史や文化、習慣の違いを認め合い、その意見を理解し、共に生きる共生のこころを育むよう努めている。平成6年(1994年)に、吹田市議会は「定住外国人に対する地方選挙への参政権など人権保障に関する政府に対する要望決議」を行っている。また、教育委員会においては、外国人幼児・児童・生徒の受入れに当たって、日本語指導協力者を派遣するなど個々に応じた指導の充実を図るとともに、諸外国の異なる文化や習慣等について理解を深め、お互いに認め合い、共に生きる精神を培うよう努めている。
今後も吹田市としては、財団法人吹田市国際交流協会を中心に、国際理解のためのさまざまな交流事業や外国人のための日本語講座等の事業を推進するとともに、教育委員会との連携も図りながら、外国人の人びととの相互協力・理解を深め、さまざまな文化、習慣、価値観の違いが豊かさとして響き合うような、そして、国籍に関係なく誰もが持つ能力、可能性に応じて生活していける社会づくりに努めなければならない。

(7) 医療を巡る諸問題

近年、医療需要の多様化・高度化、医療内容の専門化・複雑化にともない、患者に対して病名や診療の目的・内容等について適切な説明を行い、患者の納得・同意のもとに医療を行うインフォームドコンセント(医者から十分な説明を受けて、治療法などについて同意すること)の確立が求められており、平成9年(1997年)の医療法改正に当たり、医療従事者は患者の立場に立った医療情報の提供や適切な説明を行い患者の理解を得るよう努めることが盛り込まれた。また、同年に臓器の移植に関する法律が成立し、臓器移植の推進が図られているが、臓器移植の際には、透明性確保の要請と、臓器提供者や家族などのプライバシー保護の要請という二つの面の調和などが課題となっている。
また、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者やハンセン病患者等については、正しい知識や理解の不足から誤った認識や偏見を生んできた。感染症については、まず治療や予防といった医学的な対応が不可欠であるが、それとともに、感染症に対する正しい知識を広く普及させることで、患者、元患者や家族に対する誤った認識や偏見の解消を図るための施策の充実が必要である。
吹田市民病院では、平成11年(1999年)に基本理念「市民とともに心ある医療を」や運営方針、職員の指針を制定している。また、平成13年(2001年)には、6項目にわたる「患者の権利章典」を制定するなど、患者中心の医療を進め、さらに、診療内容も含め病院運営全般に市民の声を反映させるため、「医療モニター制度」を発足させるなど、患者サービスの改善に取組んでいる。
今後は、地域における役割を適切に担い、医療の質の向上と患者サービスの改善、医療従事者の守秘義務の徹底やOA化の中での情報管理の徹底などを図り、個人情報の保護などに取組んでいく必要がある。

(8) その他の人権課題

その他の人権課題では、アイヌの人びとの問題、野宿生活者、性的マイノリティとされる人びと、刑を終えて出所した人たち、犯罪被害者やその家族、あるいは被疑者などさまざまな人権にかかわる問題がある。また、最近ではインターネット等を利用した人権侵害事例やプライバシーの侵害等についても問題となっているほか、遺伝子工学の急激な進展などにともなう新たな人権課題についても対応する必要がある。

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