全国学力学習状況調査の結果の公表に関わり

「今こそ、教育の本質を見失ってはならない」

-今の雪崩を打ったような点数至上主義への流れを懸念する-

 

平成20年9月19日

吹田市長  阪口  善雄

 

  大阪府の橋下知事の発言をきっかけに、全国学力学習状況調査の結果、とりわけ各市町村の科目別平均正答率の公表について、大きな話題となっていますが、私は大阪の教育が日本一を目指すと言うなら、もっと大きな視点、重要な論点が最近、消し飛んでしまっているように思え、大阪の教育の行く末を危惧しております。

 

  大阪の教育は点数至上主義ではなかったはずです。もちろん点数は大事であり、物事を客観的、的確に把握するための物差しです。しかし、今回のような論議が、この大阪で巻き起こり、全国的に報道され、大阪の教育が最悪であるかのように喧伝されるのはいかがなものでしょうか。これからの予測不可能な時代を生きる子どもたちには、もっと人間教育というか知・徳・体を兼ね備えた総合力とでも申しましょうか、そのような力の育成を目指していかなければならないのではないでしょうか。

 

  吹田市では、これまでそのような総合的人間力を育てる教育を進めてまいりました。当然、今、騒がれている狭い意味での学力も育っているのですが、これまで歩んできた吹田の教育までもが誤解されかねない現在の状況や、一面的に子どもたちを見ることに関しては、たいへん遺憾であり危惧を持ちます。

 

  私は、何か誇りを持って行動できる総合的な人間力を持った子どもたちを地域・家庭・学校が協働のもと、育成していきたいと以前から提案してまいりました。本市におきましては、従来より総合的な人間力の育成を知「確かな学力」・徳「豊かな心」・体「健やかな体」の三方向から追及してまいりました。具体例を学校教育にとれば、「確かな学力」としては、小中一貫教育を推進する中、各中学校ブロックで「目指す子ども像」を策定し、本市独自の学力実態調査の分析や研究校での成果をもとに9年間を見通した学力・学習意欲の向上に努めてきました。

 

  「心」を育む教育といたしましては、「授業規律・生活規律」の確立と豊かな人間性の育成を目指し、文部科学省の「心のノート」が作成される以前より、本市独自の教材として、道徳教育副読本を編集して、全ての児童生徒に配付し、道徳的実践力と態度の育成を図ってまいりました。また環境教育においても、環境教育副読本を作成し、配付・活用するとともに、ビオトープ、みどりのカーテン、地域の田畑での農業体験活動にも積極的に取組んでおります。

 

  「健やかな体」の育成につながる取組といたしましては、本市では、全小学校に大小2種類のプールをあわせ持ち、系統的な指導を行っており、夏休み中も泳力向上に向け、教員が熱心な指導を続けているのは、他市にあまり類を見ない実践です。その結果、6年間で全児童の約95%が平泳ぎ200m以上の泳力を身につけており、この泳力は、全国第一位といっても過言ではありません。

 

  また、地元大学の学生が小中学校に入って教育活動に関わるスクールボランティア制度や全ての新入生に配付しておりますスクールガイドは、吹田市で生まれ、発信し、広がった取組です。この他、不登校児童生徒を支援する「光の森・学びの森活動」や公立幼稚園での「異年齢児学級保育」、吹田市の教職員が夏季休業中の一日、一堂に会して資質の向上を図る「吹田市教育研究大会」、子どもたちの豊かな放課後を地域の皆様と共に支える「こどもプラザ事業」など、「本市の教育はどこにもまして勝る」と熱く語れるものも多く、それは他の大阪府下の市町村も同様であったはずです。

 

  最近いかにも、首長と教育委員会が対立しているとか、また、首長の教育に対する思いが通じなく歯がゆいかのように、報道されることもあるようですが、本当でしょうか。

 

  私は、本市の教育委員会は、「さぼっている」のでもなければ、大事なことを隠したりしているとも感じてもおりません。今回の問題についても、必ずや、私、というよりも吹田市民のみなさんの望む、真に期待する方向で解決してくれるものと固く信じております。教育委員会が主体性を持って出した結論は支持をしていきたいと考えております。

 

  本市の政策基軸は、「市民参加、協創、みんなで支えるまちづくり」であり、本市教育委員会のビジョンを示すフレーズは「地域に根ざした質の高い公教育」です。また、吹田市が目指す子ども像として語る言葉は「学校がすき家庭(うち)がすき地域(まち)がすき」という一文に集約され、今回の全国学力学習状況調査の結果や公表のいかんによって、長い間培ってまいりました本市の施策や教育ビジョンが、ぶれるものではありません。

 

  全国学力学習状況調査の数値の公表は、各市町村教育委員会の主体的な判断で行うことではありますが、「今、教育の本質を見失ってはならない」と私はあえて警鐘を鳴らしたい。

 

  私は、教育で本当に大切にしなくてはならないもの、それは知力・体力・活力と豊かな心を兼ね備えた「総合的人間力」と確信しています。

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